3月7日俳優

受講者レポート

◾️2026年3月7日俳優クラス⑰
落語で学ぶ俳優の技術
講 師:三谷一夫
ゲスト:桂雀太(落語家)

今回は前半に落語家の桂雀太さん、後半には助監督や監督、プロデューサーの向田優さんをお迎えしての講義だった。前半の桂雀太さんには、落語が始まる前には落語についてのことや落語家についてなどをお話していただき、その後には「天狗刺し」という、天狗のすき焼き(天すき)で一儲けしようと企む男が、鞍馬山で修行中の坊さんを本物の天狗と勘違いして捕らえ、京の町へ担いで帰る珍道中を描いた上方落語の滑稽噺と「夢の皮財布」という、酒飲みで怠け者の魚屋・政五郎が夢で拾った大金入りの革財布をめぐる有名な人情落語の二つを実際に間近で見ることができた。

二つともの噺に、ものすごく惹き込まれた。落語が終わると質問をする時間が設けられ、その中で「どの噺をするかはいつ決めているのか」という質問があった。その質問に対して「“枕”という落語を始める前に話す導入の話で、お客さんの反応やその場の空気を見て決めることが多い」とおっしゃっており、その場のお客さんとの関係で噺を選び作り上げていることを知りとても印象に残った。また「会場が一体化することは呼吸が一体化することであり、大きな生命体みたいな体験ができると一番良い」と語った。

質問の後には先着5名で落語を体験できる時間があった。時間は20秒ほどで、落語が初めての受講者でも楽しむことができた。落語以外にも雀太さんのお話に笑いを誘われる瞬間が多くあり、これまでの授業では映画にフォーカスを当ててきたが、落語という新しいジャンルを教えてもらうことで、知らなかったことからでも映画に通ずるものがあると実感し、今までとは違う体験ができた。

後半の向田さんの授業では「カチンコがなるまで」をテーマに映画制作についてのお話があった。授業の最初に、最近あった出来事を2行ほどで書く時間があった。受講者それぞれが考え発表していく。一人一人にエピソードが違ったが、その人のエピソードを違う人が話すとまた違った印象になるかもしれない。向田さんから、脚本とは「なんでもない出来事から爆発するものだ」とお話があり、脚本の種となるものは私たちの日常の些細な出来事の中にあるのだと実感できた。

また、脚本の中にある「ト書き」については、「ト書き一つでお金と時間と人が動く」という話が印象に残った。普段私たちが読んでいるセリフやト書きには演じる人物の背景だけでなく、作品を作るために欠かせない要素も詰め込まれているのだと脚本に対して新しい考えを持つことができた。他にも香盤表や絵コンテを作成するなど制作部や演出部の仕事を学び、多くの準備を経てやっとカチンコが鳴らせることを改めて知った。映画制作はカチンコがなった時にさらなる日常が始まり、日常を活かしながら日常を壊すものだとお話があり、映画制作というのは全ての今ある「日常」の延長線上にあるものなのではないかと感じた。

今回の授業では芝居は行わなかったが、いつも以上に学びがあったのではないかと思った。落語は映画とは違うように見えても、演じるという部分は共通するものであったり、映画制作のことを俳優がよく知っておくことは、作品作りに対しての新しい熱量にもなるし、これだけの準備があって俳優がカメラの前に立てるということを知っておくことで役に対してのアプローチの方法も変わってくるのではないかと思った。映画から映画を学ぶ、芝居から芝居を学ぶだけではなく、私たちがこれからも学んでいきたいことは全ての日常に転がっているのだと実感し、視野を広く持ってたくさんのことを知っていきたいと思えたワークショップだった。