受講生レポート

「アジアシネマアカデミー京都」受講者レポート

2025/11/1 俳優クラス①/企画・プロデュースクラス①(合同授業)

2025/11/2   俳優クラス②
2025/11/15 俳優クラス③
2025/11/16 俳優クラス④

2025/11/16 企画・プロデュースクラス② 

◾️2025年11月1日  俳優クラス①/企画・プロデュースクラス①(合同授業)

映画人養成スクール第1期、アジアシネマアカデミーが2025年11月1日に始動した。これからの会場となるのは、落語発祥の地であり芸能上達のご利益があるとされている誓願寺だ。

開始時間に近づくにつれ参加者が集まり始め、受付で手渡された参加者の自己紹介シートに目を通す。13:00になり予定通り開始。まず今回のスクールの講師である映画24区・三谷代表から挨拶と自己紹介。続けて、このスクールの代表である普照さん、スタッフの村山さんからも挨拶があった。

そして参加者の自己紹介が始まった。事前に準備した自己紹介シートは手書きのものや凝ったもの、シンプルなものまであり、自己紹介シートだけでその人となりがわかる。

それぞれ、今回の参加目的や経歴などを話す。参加者の平均年齢は22歳と若く、芝居経験がほとんど無い参加者が多かったり、人生一度きりなので好きなことをやってみようと思った、など参加目的はそれぞれ。
参加者同士の質問の時間もあり、短い時間ではあったが約半年間、映画や芝居を共に学んでいく仲間のことを知ることができた。

自己紹介が終わり、第1回目の講師である吉田馨先生による授業が始まった。
日本映画発祥の地が会場の近くに位置していたり、街全体が撮影所であったことから京都が「日本のハリウッド」と称される背景を再確認することができた。

また、戦争が起こると戦争の映画が作られる。社会が動くとそれを反映した映画が増える。
吉田先生の「芸術というのは世の中の動きと離れて存在することはできない」という言葉から、映画は今も昔も時代と社会に密接し発展してきた芸術なのだと気付かされたのではないだろうか。

さらに配られた資料には、映画が生まれた時代から1990年代までの映画史が詳細にまとめられており、実際にフィルムを触ってみたり映画を観ながら、2時間半にわたり学びを深めた。 参加者の年齢や参加目的などそれぞれバラバラだが、映画に興味を持ち映画が好きということは共通していることだ。これからの半年間、学んだことを吸収し発信しながら高め合え る、そんな場になれたらいいなと思う。

◾️2025年11月2日  俳優クラス②

第1回目と同様、誓願寺で13:00より俳優クラスの授業が始まった。俳優クラス初回のゲストは『時をかける少女』『父のこころ』の監督である谷口正晃監督。

演技課題は『Wの悲劇』と最初からなかなかハードルの高いものだが、内容は親和性のあるものだった。

授業の冒頭で谷口監督より、1枚の紙が渡された。そこに書かれていたのは「内面の衝動を拾い上げろ、相手を反射すること、感情の流れを止めるな」というメソッド演技の一つである、マイズナーテクニックについてのものだった。これらを全員で読み、確認しあう。

そして、監督からは「今日は何回も芝居をするので他の人が言われていることも自分ごとと捉えてください」とコメント。いよいよ実技開始。

まずは全員で脚本の見方を少し学び、1組目が本読みをしている様子を見る。本読みが終わると芝居が始まった。

受講者が演じる人物は、劇団の研究生の静香とその先輩であるベテラン女優の翔。翔が自分のスキャンダルを静香に負わせようとする緊迫した場面だった。各組の芝居が終わると、監督は受講者に、芝居を見ていてどうだったかを尋ねた。「2人の関係性がよかった」「今の翔は軽く見えてしまった」など、芝居から感じとったことを共有していく。監督からは「何も感じない」「言葉が下に落ちていて相手に伝わっていない」と厳しい言葉が。他にも、静香が死体を見た時の反応はそれでいいのか、二人の距離はそんなものでいいのか、と細かいアドバイスがあった。各組、1回目の芝居からアドバイスを受け、2回目の芝居へ。どの組も1回目に受けたアドバイスに丁寧に応えようとする姿が見受けられた。

谷口監督の指導の下、授業は1時間延長して終了。最後に監督より、再び1枚の紙が渡された。ある俳優の言葉が書かれたもので、心に強く残るものがあった。そして監督から「感情は今こうやって話している時も止まることはない」と何度も「感情の流れ」についての話があった。「感情の流れが見えるか」ということはどういうことなのか、これからの芝居でも考え続けていきたいと思う。

俳優クラス初回にしては課題のハードルが高かったり、監督からのアドバイスを受け、それを飲み込むのは決して簡単なものではなかったが、個々に考えていることや感じたことを素直にぶつけていたように思う。三谷さんからは「最初だからセリフに詰まってしまってスムーズにいかないかなと思ったけど、そんな心配は無かったので半年後、どう成長しているのか楽しみだ」とコメント。

 

次回は2週間後、矢崎仁司監督をお迎えしての授業だ。どんな課題や発見が待っているのか楽しみだ。

◾️2025年11月15日俳優クラス③

今回は矢崎仁司監督を迎え、『融点』と監督の最新作である『早乙女カナコの場合は』を課題にしたワークショップだった。それぞれ一冊の脚本をもらい、配役された課題に取り組んだ。最初はオーディション形式で自己紹介と、脚本を読んでみての感想に答えていく。また、受講者から監督への質問の時間もあった。1人の受講者が「オーディションで受かる人の特徴は」といった多くの人が気になる質問をした。監督の答えは「やりたがるアピールをする人は必ず落ちる」というものだった。

その理由として監督は「普段人と話す時に感情を剥き出しにせずにどこかに隠している。私自身、感情を飲み込んでも溢れてしまう感情が美しいと思っているので、絶対にやりたいです!と表現されてしまうと引いてしまうから」と答えた。多くの人は、オーディションという場では熱量をアピールすればするほど良いと思っているはず。時にはアピールを求められることがあるかもしれないが、監督のこの言葉から新たな視点が発見できたのではないだろうか。

自己紹介が終わり、芝居へ。最初に取り組んだ『融点』では1組目は本読みから行われ、次にリハーサル、本番、というように映画の撮影同様にカットを割って撮影を行った。監督からは、「空気感が作れるまで、恋人同士だったら恋人同士に見えるまでリハーサルを何度も繰り返す」といったことや「間が欲しい」「目線は落とさない」などとアドバイスがあった。ただ、「間が欲しい」ことの理由は細かく語られなかったので、なぜそう言われているのか、そのセリフにはどういうものを求められているのか、瞬時に監督の言葉を汲み取るのは難しく感じられたように思う。もう一つの課題『早乙女カナコの場合は』では、ワイングラス、指輪、指輪のケース、クッキーなどが小道具として用意されており、監督は「良い俳優は小道具をちゃんと使う。グラスの乾杯の音や指輪のケースを閉じる音を使うとそれで人物が今何を感じているかが伝わる」とアドバイスが。

さらに、「息が足りていない」と呼吸の使い方までも求められた。もう一つのシーンでは監督が手書きしたセリフのカンペが目の前に用意されていた。監督は「セリフは独り言。好きなことを喋っている」と言い、目の前にあるセリフを見ながら芝居に取り組んだ。ここでは距離感が求められたように思った。距離=その人たちの関係性が生まれる。久しぶりなら久しぶりな距離ができる。監督の「距離で関係性は作れるからセリフはいらない」という言葉から人物の関係性はセリフだけではない、セリフ以外の要素の方が大切なのではないかと考えさせられた。

30分ほど延長してワークショップは終了。最後に監督からは「カメラは冷たいぐらいなんでも映す。人が見逃してもカメラは見逃さない」と語った。この言葉から最初に言っていた、「感情を飲み込みそれでも溢れてしまった感情が美しい」と言っていた理由が分かった気がした。さらに「現場は自分の考えてきたことを発表する場所ではないから現場ですぐに変えられる俳優は良い俳優だ。監督は俳優の目線で、俳優は監督の目線で映画を作る」と語り、俳優がものづくり全体の感覚を持つことの大切さを感じた。

そして、今回のワークショップで良かった上位3名が発表され、その3名には監督の過去作である『風たちの午後』と記念Tシャツが渡された。さらに、当日誕生日の受講生にメッセージカードを手渡ししたり、受講生1人1人の写真をノートに貼り、どんな人なのかを事前に確認するなど、監督からの愛をものすごく感じられたワークショップになった。これまで2回の芝居を通して、監督が語るものはそれぞれあって芝居には正解があるようでないものなのだと、たくさんの考えが頭をめぐった。「分からない」を大切にしてこれからも芝居に取り組んでいきたいと思う。

◾️2025年11月16日 企画・プロデュースコース②

初回は三谷さんによる映画業界の基礎知識についての授業だった。最初に、三谷さんが映画業界を志したきっかけを語る。続いて受講者はこのクラスで具体的に何をやっていきたいのかを共有していった。映画にはどういった仕事があるのか知りたい、地域が素敵に見える映画に出会った時地元が舞台の映画があったらいいなと思った、国際映画祭というものを日本に引っ張ってきたい、など三者三様の想いがあった。

これらを受け、三谷さんは「みんな映画を作るのにお金が無いとか知識と経験が無いというけれど、そんなのはなんとでもなるので踏み込むかどうか。ここに来たのなら踏み込むしかない」と受講者の背中を押した。このクラスには俳優クラスも聴講生として受講していたのだが、俳優に向けても「俳優は芝居専門と言わずにどんどんプロデュースの世界へ入った方がいい。結果的に芝居の仕事も増える。仕事は分けずにどんどんやった方がいい」ともコメント。

本題に入ると、2024年度の興行収入や日本で公開されている映画の本数についての話があった。2024年度の興行収入ランキングを全員で考えていく。1位には『名探偵コナン』、2位には『ハイキュー!!』、3位には『キングダム』といったアニメがランクイン。4位〜10位にも多くのアニメがランクインしており、トップ10の6割がアニメを占めている事実に驚かされた。次に、日本で公開されている映画の本数については1,190本であり、このうちの日本映画は685本。この685本の興行収入は約1558億円で、東宝がたった30本の映画で64%を占めていることを知り、1本の収入がどれだけ大きいかを考えさせられた。

日本には東宝以外にも松竹や東映などがあるが東宝の影響力は大きい。映画館(不動産)を持っていることで不動産業の利益があったり、テレビで放送されたドラマを映画化するといったように、映画の文化<売上となっている。第一回の吉田馨先生から日本映画の文化について学んだこともあり、今の映画はこのような結果になってしまっていることを知り、遺憾の念を抱いた。一方で、映画は社会に密接し発展する芸術だと考えると、興行収入のトップ10がアニメ映画で6割を占めていたり、文化よりも売上を重視されてしまうことは仕方がないことなのかとも思った。

このような話の中で、このアジアシネマアカデミーが「京都から世界を目指せ」と掲げているように、日本映画から離れても良いのでは?という言葉が。日本の映画の現状を知り、これから映画を作っていく一員としてどう映画と向き合っていくかを深く考える時間となった。

◾️2025年11月16日 俳優コース④

今回は三谷さんによる脚本読解から芝居をするワークショップだった。課題作品は『夏がはじまる』。こちらも同様に事前に一冊の脚本を読み、3行ストーリーや主人公の葛藤など、演じる上で欠かせない要素を紐解き、芝居へと移った。

脚本読解を始める前に、これまで2回芝居をしてきて全員が何を感じていたのかを共有していった。その中で「緊張してしまい、セリフが飛んでしまったり頭では分かっているのに体が固くなってしまい思い通りにならなかった」というものが多く見受けられた。これを受け、三谷さんは「単純に体をコントロールできていないだけで、息が止まっている。だから、ヨガとか日本舞踊などで常に息をする訓練をした方がいい」と助言した。矢崎監督も呼吸について言っていたように、日々無意識にしている呼吸を芝居では意識する必要がある。意識が無意識を超えることは難しいかもしれないが、改めて呼吸の使い方を考える機会となった。

本題の脚本読解へ。まずは「オーケストラ」を例に、なぜ脚本読解が重要なのかということについて話があった。オーケストラで全体をまとめる「指揮者」が映画製作においては「監督」であり、作品を一つにしている「楽譜」が「脚本」である。各奏者が自由に楽譜を解釈して演奏していては曲は成り立たないのと同じように、映画製作でも各部署が自由に脚本を読んでいては作品は成り立たない。

この例だけで、作品を一つにまとめている土台(楽譜や脚本)を読み込むことの重要性が分かった。特に俳優部には脚本読解が求められると感じた。俳優部のもとに脚本が届くのは遅く、何年もかけて作られた脚本を短期間で読み込み理解しなければならない。以前、「監督の意図を翻訳したものが‘‘脚本’’であり、その翻訳されたものをさらに読み解いて翻訳するのが‘‘俳優’’だ」という言葉を目にしたことがあるが、その意味をより理解できた。

次に『桃太郎』について考えた。幼い頃に誰もが読む話だが、この話は続きが気にならないし、特に面白くない。その理由として、葛藤がないからだということに気がついた。グループに分かれて桃太郎の話の中にどんな葛藤があればいいのかを考え、全体に共有した。「鬼ヶ島へ行くのを止められてしまう、鬼にも家族がいる」など様々な意見が出た。葛藤があることで面白さが増したことを実感し、物語の中の葛藤がいかに重要かを知った。そして課題である『夏がはじまる』を読解していく。1人1人、この話の3行ストーリーを発表していき、次に葛藤の中でも外的葛藤と内的葛藤を考え、この作品は何の話をしているのかを考えていった。内的葛藤については脚本には書かれていないので、多くの受講者の頭を悩ませた。読解するにつれ様々な意見が飛び交う中、三谷さんは「主人公はどんな人か、を考えた時に暗い人だと思ったら明るい部分は無いかを探す。セリフを信じずに疑う」など、答えを探すのではなく色んな捉え方をすることが大事だとアドバイスがあった。

最後に芝居へと移った。脚本読解を経たことで読解前とは違う感覚が生まれたように感じた。1組1回ずつと短時間ではあったが、読解を踏まえて芝居に臨むことで、密度の濃い芝居ができたように思えた。話を聞く中でも芝居をする中でも脚本読解がいかに重要なことなのか、身をもって実感できたワークショップとなった。