report

受講者レポート

第1期レポート

2025年11月1日〜2026年3月15日

第2期レポート

2026年5月9日〜2026年9月27日

テーマ:オリエンテーション/京都の映画史(俳優クラスとの合同授業)
講 師:三谷一夫
ゲスト:吉田馨(元京都映画祭事務局長)

映画人養成スクール第1期、アジアシネマアカデミーが2025年11月1日に始動した。これからの会場となるのは、落語発祥の地であり芸能上達のご利益があるとされている誓願寺だ。

開始時間に近づくにつれ参加者が集まり始め、受付で手渡された参加者の自己紹介シートに目を通す。13:00になり予定通り開始。まず今回のスクールの講師である映画24区・三谷代表から挨拶と自己紹介。続けて、このスクールの代表である普照さん、スタッフの村山さんからも挨拶があった。

そして参加者の自己紹介が始まった。事前に準備した自己紹介シートは手書きのものや凝ったもの、シンプルなものまであり、自己紹介シートだけでその人となりがわかる。

それぞれ、今回の参加目的や経歴などを話す。参加者の平均年齢は22歳と若く、芝居経験がほとんど無い参加者が多かったり、人生一度きりなので好きなことをやってみようと思った、など参加目的はそれぞれ。
参加者同士の質問の時間もあり、短い時間ではあったが約半年間、映画や芝居を共に学んでいく仲間のことを知ることができた。

自己紹介が終わり、第1回目の講師である吉田馨先生による授業が始まった。
日本映画発祥の地が会場の近くに位置していたり、街全体が撮影所であったことから京都が「日本のハリウッド」と称される背景を再確認することができた。

また、戦争が起こると戦争の映画が作られる。社会が動くとそれを反映した映画が増える。
吉田先生の「芸術というのは世の中の動きと離れて存在することはできない」という言葉から、映画は今も昔も時代と社会に密接し発展してきた芸術なのだと気付かされたのではないだろうか。

さらに配られた資料には、映画が生まれた時代から1990年代までの映画史が詳細にまとめられており、実際にフィルムを触ってみたり映画を観ながら、2時間半にわたり学びを深めた。 参加者の年齢や参加目的などそれぞれバラバラだが、映画に興味を持ち映画が好きということは共通していることだ。これからの半年間、学んだことを吸収し発信しながら高め合え る、そんな場になれたらいいなと思う。

映画監督実習①
講 師:三谷一夫
ゲスト:谷口正晃(映画監督)

第1回目と同様、誓願寺で13:00より俳優クラスの授業が始まった。俳優クラス初回のゲストは『時をかける少女』『父のこころ』の監督である谷口正晃監督。

演技課題は『Wの悲劇』と最初からなかなかハードルの高いものだが、内容は親和性のあるものだった。

授業の冒頭で谷口監督より、1枚の紙が渡された。そこに書かれていたのは「内面の衝動を拾い上げろ、相手を反射すること、感情の流れを止めるな」というメソッド演技の一つである、マイズナーテクニックについてのものだった。これらを全員で読み、確認しあう。

そして、監督からは「今日は何回も芝居をするので他の人が言われていることも自分ごとと捉えてください」とコメント。いよいよ実技開始。

まずは全員で脚本の見方を少し学び、1組目が本読みをしている様子を見る。本読みが終わると芝居が始まった。

受講者が演じる人物は、劇団の研究生の静香とその先輩であるベテラン女優の翔。翔が自分のスキャンダルを静香に負わせようとする緊迫した場面だった。各組の芝居が終わると、監督は受講者に、芝居を見ていてどうだったかを尋ねた。「2人の関係性がよかった」「今の翔は軽く見えてしまった」など、芝居から感じとったことを共有していく。監督からは「何も感じない」「言葉が下に落ちていて相手に伝わっていない」と厳しい言葉が。他にも、静香が死体を見た時の反応はそれでいいのか、二人の距離はそんなものでいいのか、と細かいアドバイスがあった。各組、1回目の芝居からアドバイスを受け、2回目の芝居へ。どの組も1回目に受けたアドバイスに丁寧に応えようとする姿が見受けられた。

谷口監督の指導の下、授業は1時間延長して終了。最後に監督より、再び1枚の紙が渡された。ある俳優の言葉が書かれたもので、心に強く残るものがあった。そして監督から「感情は今こうやって話している時も止まることはない」と何度も「感情の流れ」についての話があった。「感情の流れが見えるか」ということはどういうことなのか、これからの芝居でも考え続けていきたいと思う。

俳優クラス初回にしては課題のハードルが高かったり、監督からのアドバイスを受け、それを飲み込むのは決して簡単なものではなかったが、個々に考えていることや感じたことを素直にぶつけていたように思う。三谷さんからは「最初だからセリフに詰まってしまってスムーズにいかないかなと思ったけど、そんな心配は無かったので半年後、どう成長しているのか楽しみだ」とコメント。

次回は2週間後、矢崎仁司監督をお迎えしての授業だ。どんな課題や発見が待っているのか楽しみだ。

映画監督実習②
講 師:三谷一夫
ゲスト:矢崎仁司(映画監督)

今回は矢崎仁司監督を迎え、『融点』と監督の最新作である『早乙女カナコの場合は』を課題にしたワークショップだった。それぞれ一冊の脚本をもらい、配役された課題に取り組んだ。最初はオーディション形式で自己紹介と、脚本を読んでみての感想に答えていく。また、受講者から監督への質問の時間もあった。1人の受講者が「オーディションで受かる人の特徴は」といった多くの人が気になる質問をした。監督の答えは「やりたがるアピールをする人は必ず落ちる」というものだった。

その理由として監督は「普段人と話す時に感情を剥き出しにせずにどこかに隠している。私自身、感情を飲み込んでも溢れてしまう感情が美しいと思っているので、絶対にやりたいです!と表現されてしまうと引いてしまうから」と答えた。多くの人は、オーディションという場では熱量をアピールすればするほど良いと思っているはず。時にはアピールを求められることがあるかもしれないが、監督のこの言葉から新たな視点が発見できたのではないだろうか。

自己紹介が終わり、芝居へ。最初に取り組んだ『融点』では1組目は本読みから行われ、次にリハーサル、本番、というように映画の撮影同様にカットを割って撮影を行った。監督からは、「空気感が作れるまで、恋人同士だったら恋人同士に見えるまでリハーサルを何度も繰り返す」といったことや「間が欲しい」「目線は落とさない」などとアドバイスがあった。ただ、「間が欲しい」ことの理由は細かく語られなかったので、なぜそう言われているのか、そのセリフにはどういうものを求められているのか、瞬時に監督の言葉を汲み取るのは難しく感じられたように思う。もう一つの課題『早乙女カナコの場合は』では、ワイングラス、指輪、指輪のケース、クッキーなどが小道具として用意されており、監督は「良い俳優は小道具をちゃんと使う。グラスの乾杯の音や指輪のケースを閉じる音を使うとそれで人物が今何を感じているかが伝わる」とアドバイスが。

さらに、「息が足りていない」と呼吸の使い方までも求められた。もう一つのシーンでは監督が手書きしたセリフのカンペが目の前に用意されていた。監督は「セリフは独り言。好きなことを喋っている」と言い、目の前にあるセリフを見ながら芝居に取り組んだ。ここでは距離感が求められたように思った。距離=その人たちの関係性が生まれる。久しぶりなら久しぶりな距離ができる。監督の「距離で関係性は作れるからセリフはいらない」という言葉から人物の関係性はセリフだけではない、セリフ以外の要素の方が大切なのではないかと考えさせられた。

30分ほど延長してワークショップは終了。最後に監督からは「カメラは冷たいぐらいなんでも映す。人が見逃してもカメラは見逃さない」と語った。この言葉から最初に言っていた、「感情を飲み込みそれでも溢れてしまった感情が美しい」と言っていた理由が分かった気がした。さらに「現場は自分の考えてきたことを発表する場所ではないから現場ですぐに変えられる俳優は良い俳優だ。監督は俳優の目線で、俳優は監督の目線で映画を作る」と語り、俳優がものづくり全体の感覚を持つことの大切さを感じた。

そして、今回のワークショップで良かった上位3名が発表され、その3名には監督の過去作である『風たちの午後』と記念Tシャツが渡された。さらに、当日誕生日の受講生にメッセージカードを手渡ししたり、受講生1人1人の写真をノートに貼り、どんな人なのかを事前に確認するなど、監督からの愛をものすごく感じられたワークショップになった。これまで2回の芝居を通して、監督が語るものはそれぞれあって芝居には正解があるようでないものなのだと、たくさんの考えが頭をめぐった。「分からない」を大切にしてこれからも芝居に取り組んでいきたいと思う。

テーマ:映画業界の基礎知識
講 師:三谷一夫

初回は三谷さんによる映画業界の基礎知識についての授業だった。最初に、三谷さんが映画業界を志したきっかけを語る。続いて受講者はこのクラスで具体的に何をやっていきたいのかを共有していった。映画にはどういった仕事があるのか知りたい、地域が素敵に見える映画に出会った時地元が舞台の映画があったらいいなと思った、国際映画祭というものを日本に引っ張ってきたい、など三者三様の想いがあった。

これらを受け、三谷さんは「みんな映画を作るのにお金が無いとか知識と経験が無いというけれど、そんなのはなんとでもなるので踏み込むかどうか。ここに来たのなら踏み込むしかない」と受講者の背中を押した。このクラスには俳優クラスも聴講生として受講していたのだが、俳優に向けても「俳優は芝居専門と言わずにどんどんプロデュースの世界へ入った方がいい。結果的に芝居の仕事も増える。仕事は分けずにどんどんやった方がいい」ともコメント。

本題に入ると、2024年度の興行収入や日本で公開されている映画の本数についての話があった。2024年度の興行収入ランキングを全員で考えていく。1位には『名探偵コナン』、2位には『ハイキュー!!』、3位には『キングダム』といったアニメがランクイン。4位〜10位にも多くのアニメがランクインしており、トップ10の6割がアニメを占めている事実に驚かされた。次に、日本で公開されている映画の本数については1,190本であり、このうちの日本映画は685本。この685本の興行収入は約1558億円で、東宝がたった30本の映画で64%を占めていることを知り、1本の収入がどれだけ大きいかを考えさせられた。

日本には東宝以外にも松竹や東映などがあるが東宝の影響力は大きい。映画館(不動産)を持っていることで不動産業の利益があったり、テレビで放送されたドラマを映画化するといったように、映画の文化<売上となっている。第一回の吉田馨先生から日本映画の文化について学んだこともあり、今の映画はこのような結果になってしまっていることを知り、遺憾の念を抱いた。一方で、映画は社会に密接し発展する芸術だと考えると、興行収入のトップ10がアニメ映画で6割を占めていたり、文化よりも売上を重視されてしまうことは仕方がないことなのかとも思った。

このような話の中で、このアジアシネマアカデミーが「京都から世界を目指せ」と掲げているように、日本映画から離れても良いのでは?という言葉が。日本の映画の現状を知り、これから映画を作っていく一員としてどう映画と向き合っていくかを深く考える時間となった。

映画脚本読解(基礎)①
講 師:三谷一夫

 脚本読解を始める前に、これまで2回芝居をしてきて全員が何を感じていたのかを共有していった。その中で「緊張してしまい、セリフが飛んでしまったり頭では分かっているのに体が固くなってしまい思い通りにならなかった」というものが多く見受けられた。これを受け、三谷さんは「単純に体をコントロールできていないだけで、息が止まっている。だから、ヨガとか日本舞踊などで常に息をする訓練をした方がいい」と助言した。矢崎監督も呼吸について言っていたように、日々無意識にしている呼吸を芝居では意識する必要がある。意識が無意識を超えることは難しいかもしれないが、改めて呼吸の使い方を考える機会となった。

本題の脚本読解へ。まずは「オーケストラ」を例に、なぜ脚本読解が重要なのかということについて話があった。オーケストラで全体をまとめる「指揮者」が映画製作においては「監督」であり、作品を一つにしている「楽譜」が「脚本」である。各奏者が自由に楽譜を解釈して演奏していては曲は成り立たないのと同じように、映画製作でも各部署が自由に脚本を読んでいては作品は成り立たない。

この例だけで、作品を一つにまとめている土台(楽譜や脚本)を読み込むことの重要性が分かった。特に俳優部には脚本読解が求められると感じた。俳優部のもとに脚本が届くのは遅く、何年もかけて作られた脚本を短期間で読み込み理解しなければならない。以前、「監督の意図を翻訳したものが‘‘脚本’’であり、その翻訳されたものをさらに読み解いて翻訳するのが‘‘俳優’’だ」という言葉を目にしたことがあるが、その意味をより理解できた。

次に『桃太郎』について考えた。幼い頃に誰もが読む話だが、この話は続きが気にならないし、特に面白くない。その理由として、葛藤がないからだということに気がついた。グループに分かれて桃太郎の話の中にどんな葛藤があればいいのかを考え、全体に共有した。「鬼ヶ島へ行くのを止められてしまう、鬼にも家族がいる」など様々な意見が出た。葛藤があることで面白さが増したことを実感し、物語の中の葛藤がいかに重要かを知った。そして課題である『夏がはじまる』を読解していく。1人1人、この話の3行ストーリーを発表していき、次に葛藤の中でも外的葛藤と内的葛藤を考え、この作品は何の話をしているのかを考えていった。内的葛藤については脚本には書かれていないので、多くの受講者の頭を悩ませた。読解するにつれ様々な意見が飛び交う中、三谷さんは「主人公はどんな人か、を考えた時に暗い人だと思ったら明るい部分は無いかを探す。セリフを信じずに疑う」など、答えを探すのではなく色んな捉え方をすることが大事だとアドバイスがあった。

最後に芝居へと移った。脚本読解を経たことで読解前とは違う感覚が生まれたように感じた。1組1回ずつと短時間ではあったが、読解を踏まえて芝居に臨むことで、密度の濃い芝居ができたように思えた。話を聞く中でも芝居をする中でも脚本読解がいかに重要なことなのか、身をもって実感できたワークショップとなった。

映画監督実習③
講 師:三谷一夫
ゲスト:金子由里奈(映画監督)

今回は金子由里奈監督を迎えてのワークショップ。自己紹介から始まり、想像力を使った課題や短歌 から即興芝居、そして演技課題は監督の最新作である『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』を用い た。最初に監督からは「演技や映画のことはまだまだわからないことばっかりなので、今回お互いに 刺激を受け合えたらなと思っております」とコメント。

自己紹介では全員で円になり、事前に用意していた「自分が大切にしている物」と、その思い出を話 していく。ぬいぐるみや、ストラップ、アクセサリー、手帳など、それぞれの物にそれぞれの想いが 詰まっており、短いエピソードだけでもその人の歩んできた過去がどんなものであったのかが頭に浮かんだ。監督が全員に大切にしているものを聞いた理由として「人は人との関わりだけじゃなくて、 物や言葉などの非人間的な物でも作られている。芝居をする時、美術や小物は初めて見るものだけど、役としては一つ一つの物に思い出があって手に馴染んでいる。シーンに書かれていない外側では 物をどうやって育てているのかを考えると芝居が豊かになると思っているから」と語った。 

次に想像力を使った課題。監督がビニール袋をクシャクシャにして中央に置き「色んな角度から見てみて何に見える?」と質問を投げかけた。受講生たちからは「うさぎが寝ている、仕事終わりの人が 投げたビニール袋、魚の骨、漂流物」など様々な回答が。ただのクシャクシャに丸められたビニール 袋が、見る人の角度や感性によって色々なものに生まれ変われるのだということを実感し、想像する ことの無限の可能性を感じた。短歌を用いた即興芝居は、先ほどの想像力を使った課題で、想像した内容に共通しない人同士でグループを作り「風という名前をつけてあげました。それから彼を見ないのですが」という短歌から話を作りあげた。課題の短歌は5グループとも同じなのに、グループごと に考えることや選ぶ言葉が違った。想像から生まれた即興芝居を、見ている方もそれを想像するというように想像の連鎖がその空間を包んでいた。

そして芝居へ。課題は、麦戸ちゃんと七森が自分の身 に起きた出来事や気持ちを打ち明けるシーン。監督は芝居に入る前に、どのように解釈したのかを受講者と共有していく。芝居中は、監督が気になる点があれば芝居を止めた。指摘が多かったものとし て、体の使い方や「感情を息で表してしまっている」「言葉を喋っている」などが挙げられた。これまでのワークショップでも呼吸や息の使い方についての指摘があった。これまでの指摘は、普段の生活で無意識にしている息が芝居になるとできなくなるので意識してみるというもの。しかし今回の指摘は「感情を息で表してしまっている」という、日常ではしない癖が芝居に表れてしまっているというものだった。同じ息についての指摘でも、意識すべき視点が全く違うことを学んだ。

また「言葉を喋っている」点に関しては「セリフを喋っている時に自分との戦いになってしまって相手を意識して芝居ができていないから、今を意識することや準備して忘れることが重要」だとアドバイスがあった。そして、体の使い方に関しては七森の場合「自分の存在自体を怖がらせてしまうと思っているか ら、あぐらや足を開けた座り方は違う」と語り、相手を意識するのは言葉だけではなく体の使い方で も意識することが大切だと学んだ。他にも芝居が「芝居っぽく」ならないためには想像力の調整が必要だというアドバイスもあり、想像や言葉など、目に見えないものを相手にどう届けるかを意識したワークショップになった。

三谷さんからはセリフを相手に聞いてもらえているのかを気にすること、 そこで生まれる「揺らぎ」が見れたら良い芝居になる、とコメント。これまでのワークショップを経て、受講生個人の課題が明確になってきたのではないかと思う。様々な芝居へのアプローチがある中で、どう改善していくのか。1つ1つ丁寧に芝居と向き合っていきたい。

テーマ:映画ビジネスの基礎知識
講 師:三谷一夫

今回のテーマは、「映画ビジネスの基礎知識」についての授業だった。受講者が映画のどのような分野をやりたいのか、どのような企画を持っているのか、また映画の興行収入は何に当てられているのかなど映画公開後の動きに重点を置き、授業が進められた。

まず、受講者1人1人がどのような企画を持っているのかを全体に共有していく。俳優クラスの授業をそのまま映画にしてみたいといったものや、耳が不自由な人や言語関係なく世界に通用するセリフがないもの、地元を舞台にしたの、今までドキュメンタリーや音がテーマの映画を作ってきたから群像劇を作ってみたいなど、この一瞬で興味深いたくさんの企画案が挙がった。これを受け三谷さんは「企画は何個あってもいい。アイデアはたくさん出るけど、それを具体化させていく事が大変。だが、始めてみないと始まらないのでこの機会に是非挑戦してほしい」と語った。

次に映画公開にあたっての話へ。映画を企画し、脚本を書き撮影するというだけでも3年はかかるため、公開までに相当な体力を使うものだと思っていた。しかし、公開後の動きこそ、大きなエネルギーを必要とすることを知った。スタッフの村山さんと受講生の中に1人、自身の大学の卒業制作を劇場公開に向けて動いている途中らしく、「配給のことは大学では学ばないから、初めての事で分からない事が多い。予告編やフライヤーデザインを外部に依頼するとお金がかかるため自分たちでできるところは全て自分たちで賄っている」と話があった。公開後にも資金は必要で、どの映画館に上映してもらうかの交渉や広報活動など、映画を観客に届けるための作業が続いていく。

興行収入の話では、興行収入◯◯億円!とよく目にする。制作費や宣伝費含め、5億円かかったとして興行収入10億円を達成すれば黒字のように思えるが、実際はそうではなかった。10億円のうち60%が劇場に、配給が40%。配給収入が4億円だとしてもさらにそこから配給手数料が20%が引かれるため、手元に残るのは3.2億円ほどで、1.8億円の赤字となってしまう。そこで製作委員会の話へ。製作委員会には配給会社以外にも、テレビ局や出版社、芸能事務所などが含まれ、それらが出資することで各会社の得意分野を発揮しリスクを分散し映画を作り上げている。この仕組みを聞くと映画はうまく進むようにも思えるが、製作委員会を設立するにはデメリットもある。何社も集まると意思決定のスピードが落ちたり、権利や利益が細かく分かれるため投資家を呼び込めないなどの課題が挙げられた。 

今回、映画ビジネスを学ぶ中で、映画を作ることはとてつもなく面倒で大変だと改めて実感した。しかし、面倒で大変だからといって辞めようとか嫌いにはなることは無く、この面倒さや大変さを上回る喜びが映画にはあるのだと思い、さらに映画の魅力を感じられた授業となった。

映画脚本読解(基礎)②
講 師:三谷一夫

今回は芝居課題はなく、前回同様、三谷さんによる『夏がはじまる』と『フラガール』を用いた脚本読解のみの授業だった。『夏がはじまる』に関しては、前回は脚本の核心を掴んだので今回は役の核心を掴むために取り組めることとは何か、に重点を置いた。まず1つ目は人物が明るい人なのか頑固な人なのか、というようにどんな人物なのか「キャラクターを箇条書きする」こと。

2つ目は役の人物が生きた時代の空気感や、場所、生活、職業、など「背景を調べる」こと。では何を用いて背景を調べるのか。三谷さんは「本や写真、絵画、音楽、インターネットなど。音楽は特に時代の気分を反映していたりするのでその時代にどういう音楽が流行っていたのかを調べるのも一つの手段だ」と語った。
3つ目は人物の生い立ちや、トラウマ、思い出など「履歴書やエピソードを作ってみる」こと。エピソードは想像でしかないが、学生の時に何があったのか、誰にいつどのようなことを言われたのかなどを考えてみること。

4つ目は人物がどうしたい人なのか、どういうことをやりたいと思っている人なのか「目的・願望・欲求を考える」こと。脚本に書いてあることではなく、本当はこういうことをやり遂げたい、というように「根っこにある部分」を考えること。最後に、この人は布団に入って寝る前に何を呟くのだろうといった「呟き」を考えること。これらを踏まえ、『夏がはじまる』の人物像を読み解いていく。受講生の多くが行き詰まったのは「エピソード」と「呟き」だった。エピソードは曖昧にしていると人物がはっきりしてこないので、具体的に考える事が重要。「具体的に」という部分が難しく言葉に表すのがうまくできなかった。呟きに関しては、普段の生活で言うかもしれないが意識して呟こうとは思わない。呼吸と一緒で、無意識にしていることを考えることが難しく感じた。

他にも脚本を読み解く前の基本作業として、その作品の監督が他にどんな作品を撮っているのか、脚本家の生い立ちなど「映画の作り手たちの思考をチェックすること」が大切だと学んだ。俳優は映画制作の中でも一番遅くに脚本が渡るため、より作風を知っておくためにも制作人の好き嫌いだったり作品の世界観を掴んだりなど、人に興味を持つことの重要性を知った。

『フラガール』では、受講生が考えてきた3行ストーリーや主人公の目的・願望、外的葛藤や内的葛藤を共有し、脚本の核心を掴んでいった。主人公を考えた時に、フラダンス講師のまどかと炭坑町で育った紀美子の2つに分かれた。ここで重要なのは、作り手たちはどちらの人物の生き方を観客に見せたかったのかという事と人物の心の揺らぎの幅を考えることだ。これらを考えた時、主人公は「紀美子」と捉えた方が、脚本の核心に近づいていきやすくなるという結論に至り、脚本読解を進めていった。

今回2つの脚本を通し、作家の表現したいことを考える習慣や考えたことを文字や言葉にすること、作品と徹底的に向き合うことの大切さを感じた授業となった。また、俳優は作品と向き合う際「役作り」を行う。役作りというと、体を鍛えたり絞ったりなどの外見に意識が向き、役を作った気になってしまうこともある。しかし、大切なのは中身で「人生で経験したことで、その人の奥に内面化されたもの」を考えることや、本を読んだり映画を観たり、人物を知ったりなど多面的にアプローチをすることも重要だということを改めて実感できた。

映画監督実習④
講 師:三谷一夫
ゲスト:白羽弥仁(映画監督)

今回は前半に三谷さんが「オーディションの審査に通過する芝居」をテーマに『フラガール』を用いた芝居と、後半は白羽弥二監督をお迎えしたワークショップだった。

『フラガール』は、居酒屋で洋二郎がまどかに、妹の紀美子を支えてほしいと頼むシーンと、紀美子が早苗と一緒にフラダンスを辞める、と告げる2つのシーンに分かれた。まずは1回ずつ全組芝居をする。

2回目は、気になるところがあれば、受講者になぜその行動をとったのか、人物の特徴に触れたりなど芝居を止めながら進められた。洋二郎とまどかのシーンで指摘が多かったのは「芝居が流れている」ということ。居酒屋に入ってきた洋二郎が、すぐにまどかのもとへ行き、横に座るという行動は本当にその人物なら有り得るのかという問題が挙げられた。

改善していくうえで、洋二郎の置かれた状況や性格を掘り下げていくと、洋二郎の「ゆらぎ」が見えて、受講者の芝居が変わった。と、同時に洋二郎の芝居が変わればまどかの芝居も変わった。また、物語の季節はいつなのか。「オーディションの審査は朝から晩まで行われ、同じことの繰り返しを見ているので、冬ならば上着を着るといった細かいところが合否の分かれ目となる」と三谷さんから助言があった。

まどかに関しては、手持ち無沙汰になると目の前にある飲み物を理由なく飲んでしまうことや、洋二郎役の人が変わってもまどかの芝居があまり変わらないといった課題があった。本来なら、相手役が変われば、その都度受ける反応も変わってくるはず。不器用で人に頼るのが苦手なまどかが「一杯付き合え」と言われて素直にビールを手に取るのか、相手にセリフを言われたからセリフを返すのか。今回の芝居の改善点は人物の内面を探っていけば解決する問題ばかりだった。オーディションでは、審査課題を事前に渡されるものもあれば、当日に渡されるものもある。そして、今回のように長い時間を使って課題を考える時間もない。どれだけ瞬時に脚本を読み込むことや、相手に反応していくことの重要さを感じた。

後半の白羽弥二監督のワークショップでは、地下アイドルの解散危機から物語が展開される監督のオリジナル脚本を課題に進められた。今まで2人芝居が多かったが、今回は4芝居。テンポ感が求められ、いつもとは違う芝居のアプローチで取り組んだ。

監督からはセリフを言った後に息が十分出せていないことや、ずっと芝居が一本調子だと指摘があった。いつもとは違う芝居のアプローチでも、息をすることや感情の流れはどの芝居にも共通していることだと改めて感じた。最後には受講者から「どういう俳優が増えていってほしいか」と質問があった。監督からは「役者+社会に対して見開いていること」と答えがあった。例えば、役者+小説家や、役者+監督など、何かを突き詰められることが俳優としての振り幅を広げていくのだと感じた。

テーマ:映画の企画開発①
講 師:三谷一夫
ゲスト:深田祐輔(映画監督・プロデューサー・脚本家)

今回は映画監督・プロデューサー・脚本家である深田祐輔さんをゲストに迎え、2作品を例に「世界コンテンツの今を考える」をテーマに授業が行われた。1作品目は深田さんがプロデューサーで関わった『UltimateBeastmaster』という6カ国のアスリートが参加したリアリティーショー。日本で例えると、SASUKEのような競技に国ごとに選ばれた選手が挑戦する構成となっており、国境を越えて盛り上がることができ、世界的に視聴してもらうことを狙いとしている。

リアリティーショーというジャンルを用いることで、比較的低予算で作りやすく分かりやすいのが特徴。作中はいろんな言語が飛び交うが、見ているだけで楽しむことができる。この作品において深田さんは、各国のプロデューサーとやりとりをしながら、日本のパートを編集者の人と共に編集をしたり、出演許諾を行ったりなどを担当。世界コンテンツを制作するプロデューサーの仕事は映像を作るだけではなく、国や文化の違いを越えて多くの人と関わりながら作品を成立させる役割であることが分かった。

2作品目は、日本のストーリーを世界基準のアニメーションで表現しつつ、タイとのコラボレーションやバイクアクションと大手企業とのコラボレーションによって制作が行われた『TokyoOverride』。世界観を一から構築することでIP(知的財産)の基礎作りをしたり、制作にはタイ人も関わっており、タイのクリエイティブ人材は非常にレベルが高く、日本よりも優れているという話が印象に残った。このような国際的なコラボレーションによって、映画やアニメといった枠を超えた作品づくりが可能となり、一つの世界観をさまざまな形で広げていくワールドビルディングの可能性が示されていた。一方で、「世界コンテンツ」から「ローカル消費」の時代という話もあった。

『47Ronin』ではなく、『イクサガミ』のように世界中で同じように消費されるのではなくそれぞれの国や文化に合った形で楽しまれることを重視している、という事も印象に残った。深田さんが「日本のおかずで海外向けのお弁当を作る」と言っていたように、世界に発信することとローカルな価値をうまく組み合わせることが必要だと感じた。しかし、海外からみた日本のコンテンツは「アニメ」になっている。このクラスの最初の授業で学んだように、日本の興行収入はほとんどアニメで占められており、日本は映画も俳優も世界と比べると遅れているという話から、日本の文化や表現の強みを活かしつつ、映画や実写作品でも世界に通用する作品を作っていくことの重要性を改めて感じた。

他にも「世界コンテンツ」の「世界」とはどこを示しているのか。そもそも世界とは?自分目線の「世界」を定義するといったように、ただ「世界コンテンツ」を知るだけではなく、自分にとっての「世界コンテンツとは」を考えるきっかけになった。

映画監督実習⑤
「映画の音」からものづくりと芝居を考える
講 師:三谷一夫
ゲスト:松野泉(映画監督・録音技師)

第8回目のワークショップは、映画監督であり録音技師でもある松野泉さんをお迎えして行われた。事前課題としては、自分がなりたかった人物となりたくない人物を挙げてそこからその人物の職業を考えたり、初対面の相手の職業を知るための質問を考えるといった、今まで通りの脚本を用いた芝居ではなく自分自身について考える課題だった。また、『ビフォア・サンライズ』と『ビフォア・サンセット』『冬物語』の3作品を鑑賞することも勧められていた。

ワークショップが始まると、松野さんは挨拶をし始めた少し後に「人前で喋るのが苦手なのでシナリオを書いてきました」と言い、シナリオが受講者たちに配られた。そこには松野さんが直前まで喋っていた文章が一言一句、同じように書かれていた。松野さんが、そこに書かれたシナリオをたった今、頭に言葉が浮かび上がったかのように読んでいく。途中からは受講者がシナリオを読んでいった。松野さんが書いた文章をなるべく自分が書いたように読んでいくよう指示があった。受講者が読んでいくが、抑揚がついてしまい読んでいる「その人」が見えなかった。同じ文章なのに、書いた本人が読むのと他人が読むのでは違いがあり、翻訳された文章を聞いている感覚になった。

シナリオから一旦離れると、身体のワークが始まった。ゆっくりと立ってゆっくりと立つ。「へ〜(そうなんだ)」の「へ〜」だけを使って相手や自分に呼びかける。普段やらない動きをすることで恥が生まれると同時に意識が今ここに戻り相手の存在や自分の体の重さ、呼吸が際立った。また、ペアを作り背中合わせになり体育座りから相手の力を借りて立ってみる。芝居と一緒で、相手の存在を感じて意識しなければ立つことができなかった。

次に4人1組になり『ビフォア・サンライズ』の電車のシーンや電話のフリで話しているシーンを用いてのワーク。話す2人と見る2人に分かれる。話す方の2人は出会ったばかりの設定や、グループごとに関係性を決めていき、相手を「聞く」ことを意識しながら質問や会話をしていく。見る2人は喋っている片方の人を自分がカメラになったかのように見つめる。会話をし合う2人には間が生まれなかった。間が生まれてもいいのに、間が生まれることに責任感を感じ怖がっていた。

見ている方は、喋っている2人の「間」を埋める責任感や緊張感がはっきりと伝わり、間がないことはテンポの良さではなく不安の表れであると実感した。芝居においても同様に「何かをしなければならない」「止まってはいけない」という無意識な思い込みが、相手を聞くということを奪っているのかもしれないと感じた。間は失敗ではなく、相手を受け取った結果として自然に生まれるものだということをこのワークを通じて実感した。

今回のワークショップで松野さんが「出会いの瞬間に立ち会いたいと思う」と語っていたが、エチュードで行われた出会ったばっかりの人との会話は難しく感じたように「出会いの難しさ」を実感した。三谷さんからも「聞くことを丁寧に、芝居の空気の流れが変わる瞬間をみたい」とコメントがあった。そのためには生活の濃度を上げていくことが大事で、人に会うこと以外でも映画を見ることや美術館に行くこと、音楽を聞くことも全てが出会いの準備だということを実感したワークショップとなった。

映画脚本読解+演技実践
講 師:三谷一夫

2026年一発目となる第9回目のワークショップが行われた。今年度のワークショップは、課題となっていた『マイスモールランド』の芝居から始まった。主人公であるサーリャと、サーリャが働くバイト先の聡太が河川敷で会話をするシーンを二人ずつ順番に行った。

一巡目が終わったあと、三谷さんが軽く講評をし、脚本読解を始める前の段階として重要なステップを確認し、共有した。
1つは「脚本の背景を知ること。」その脚本はどのような時代設定で、どのような事がテーマとして描かれているのか。脚本の背景を学ぶことが作品の世界観を掴むことに繋がる。
もう1つは「作り手の視点を持つこと。」監督や脚本家が、何を考えてその脚本を作ったのかを知ることで、俳優自身も作り手としての視点を持って、作品に参加することができる。

それらを理解した上で『マイスモールランド』の脚本読解に入った。それぞれが考えてきた三行ストーリーを発表し、他者の考えを吸収した。その後、三行ストーリーを作るヒントとなる、「主人公の願望」や「葛藤」などの物語の要素を読み解き、脚本の核となるスルーラインを考えた。今回の『マイスモールランド』では、クルド人難民問題をテーマに、一人の女性がたくましく生きる姿の美しさや、女性がそうあって欲しいという願い、「生きる場所は自分で決める」というメッセージが込められている。

脚本読解で得たものを手に、2回目の芝居に取り組んだ。この回では気になるところがあればアドバイスが入った。サーリャが初めて本当の自分のことを話すこのシーンでは、サーリャや聡太の中にある葛藤がゆらぎとして芝居に出ているかがキモとなる。空気を作ろうと意識してしまうと、逆に二人の間に流れるものが消えてしまう。それぞれが持つ願望や、シーンの要点は抑えた上で、芝居中は目の前の会話に集中することで、空気が流れる芝居となる。アドバイスがあった後、芝居をする二人の間には自然と「二人の空気」が少しずつ流れるようになる感覚があった。それは芝居をするペアごとに違っていて、前回の課題であった「相手によって芝居が変化しない」というところにも変化が訪れている証拠かもしれないと感じた。

二回目の芝居が終わった後講評があり、それぞれの良かった点、改善すべき点を確認した。全体では、「二人の空気を大切にすること。」「自分の気持ちを優先して、やりたくなったら行動すること。」などが挙げられた。「会話」をきちんと行うことによってシーンは成り立っている、という重要性とそれを芝居で行う難しさを再確認できた。

テーマ:映画の企画開発②
講 師:三谷一夫
ゲスト:後藤美波(映画監督・プロデューサー・脚本家)

本日は監督、脚本家、プロデューサーと多岐にわたり活躍されている後藤美波さんをゲストにお招きしました。

後藤さんからは2024年に公開された映画「ブルーイマジン」に脚本家・プロデューサーとして参加されています。本作は全国で公開され、第53回ロッテルダム国際映画祭のBright Future部門に正式出品されました。

講義では、映画「ブルーイマジン」を事例に、企画書の作り方や制作資金調達のヒントをお話いただきました。海外サイトに掲載されているピッチリールなどの活用も大変為になったかと思います。

本クラスの最終回では実際に参加者の皆さんに映画企画のプレゼンをしていただく予定です。是非今日の講義を参考にしていただければと思います。

映画監督実習⑥
講 師:三谷一夫
ゲスト:柳裕章(映画監督)

本日は、柳裕章監督をお迎えして、次回の撮影実習に備えたリハーサルを行いました。

俳優たちは柳監督作品「事実無根」の脚本1冊を事前に熟読し、2グループに分かれて

提示された課題に挑みました。感情を強めに出すシーンが多く、苦労している方が多く見受けられました。

柳監督は「映像になると芝居が小さくみえる」「身体を使って出せるだけ出してみることで感情が沸きあがってくることもある」と指導いただきました。

この日はカメラマンの武村さんも俳優たちの様子を見に来てくださいました。

次回はカメラをいれて実践形式で俳優1人1人の演技リールを作成していきます。

プロの映画監督とカメラマンが俳優のリールを作ってくれる機会はなかなかないのでとても有難いです。オーディションを勝ち取れる映像を作りましょう!

映画監督実習⑦
プロのカメラマンを迎えて撮影実習
講 師:三谷一夫
ゲスト:柳裕章(映画監督)&武村敏弘(撮影技師)

今回は、柳裕章監督とカメラマンである武村敏弘さんをお迎えしての撮影実習だった。課題の作品は監督の最新作である『事実無根』を用いた。課題は星が事実を明らかにするために弁明するシーン、娘の悠美が過去の想いを爆発させるシーンを2つに分け、計3つの場面に振り分けられ、それぞれのシーンに取り組んでいった。いつもとは違う形式の撮影実習からか、受講者の身体には硬さが感じられ、それを見た監督は全員でストレッチをするように促した。そのおかげか、少しリラックスすることができ、早速撮影実習へと移った

映画の現場と同様に段取りから始まり、監督が演出をし、本番という流れで行われた。星が事実を弁明するシーンの段取りでは多くの組が「感情が出し切られていない」「まだまだ足りない」と指摘を受けた。監督は「他の監督だったらOKを出すかもしれないけれど、僕の場合は足りない」と語り、受講者は監督によって演出の違いが大きく変わり、それに素早く対応していくことの難しさを実感した。

本番が始まると、セリフを間違ったり演出通りに動いたりと順調に進んでいると思われたが、途中でカットがかけられた時があった。その理由としては、2人の対話のシーンをカットバックで撮影している時に、2人が重なってしまっていたからだった。武村さんからは「カットバックの時にカメラのレンズが見えていない時は、自分は映っていないから、レンズが見えるところに移動しないといけない」と語り、芝居に集中しつつもカメラの位置までをしっかりと把握しておくことの難しさを実感した。また、バストアップで撮影をしている時にも一つ注意点があった。それは、身体が揺れてしまっていること。緊張からか、無意識に揺れてしまっていた。

カメラの前にしっかりと立つこと、その場にその人物として存在することは、一見簡単なように思うが「役」よりも「自分」で感じる五感が勝ってしまう。目の前の相手や物を見つめ、言葉を聞き、それを受けて発信するまでに使う集中力がいかに大切なのかを実感できた。悠美が過去の想いを爆発させるシーンでも「感情が出し切られていない」という指摘を受けた。それと同時に、周囲の受けの芝居にもアドバイスがあった。4人で悠美を囲い、悠美の爆発した想いを受け取っているはずなのに誰1人動かずじっと見つめているだけで、結果的に悠美1人だけが芝居をしている状態になっていた。

情を爆発させることを邪魔してはいけないということだったり、カメラのことを考えると動けなくなってしまったことから、ここでも相手から受けることに集中しつつもカメラのことにも集中することが重要になった。そして、感情を爆発させている人だけが芝居をするのではなく、その周りにいる人物も心を動かし、一体となってその場の空気を作りその場に存在することで一つのシーンが完成するのだと改めて気が付いた。

最後に柳監督からは「今日指摘したことは明日できるようにはならない。俳優業でもそうでなくても一日にして成らず。自分はこういう人間だと決めつけてしまうと、そこで終わってしまうので家にいる時の自分や外にいる時の自分、引き出しを増やしておくこと」とアドバイスがあった。武村さんからは「今回は自由に動いてもらってそれを追うようにカメラを振っていたけれど、場合によってはカメラを振ってしまった時点でNGになってしまうことがあるので、決められた画角の中でいい芝居をするにはどうすればいいのかを考えながら今回の映像を見て欲しい」とアドバイスがあった。

初めてカメラの前に立った人もそうでない人も、新しい芝居の取り組み方を学べた時間となった。

テーマ:映画配給/宣伝/興業/二次利用
講 師:三谷一夫

今回は「映画配給/宣伝/興行/二次利用」をテーマに授業が進められた。その前に、企画プロデュースクラスの受講者が今持っている企画についての話題になった。以前にもどんな企画を持っているのか共有する機会があったが、その後も企画を持ち続け、考えを深め企画を練っていた。

受講者の1人は、「企画は一本だけにせず、アイディア出しのようにいくつも考えておきたい」と語り、それを受けて三谷さんは「プロデューサーと呼ばれる人たちは、10本ぐらい持っている人もいる。それぞれの企画に生かされることもあるので、同時に並行してやるのが良い」とコメントした。また、以前来てくださった深田祐輔さんが関わった作品に興味を持った受講者もいた。深田さんは2月の中旬から短編の映画を撮るらしく、今はその役者やスタッフを募集しており、何人かの受講生が興味を示していた。こういった企画が身近にあることで、受講者にとって大きな刺激になった。

本題に入ると、実際の映画製作で使われた予算表や収支報告書や出資製作契約書などを用いて進められた。予算表から受けた印象は、映画を作るにはこんなにもお金がかかるということ。ほとんどが人件費に当てられており、多くの人の労働によって成り立っていることを実感した。また、監督や脚本家には成功報酬というものがあり、俳優には成功報酬を設けているところはほとんどないと知って、役割によって契約内容や報酬の形が大きく異なることを学んだ。収支報告書からは映画を観てもらうことの難しさを実感した。

製作にかかった費用を回収することも考えなければいけないが、自分たちが熱量を注いで作ったものが少数の人の目にしか映らないのは寂しい。作品を作ることと同じぐらい、それをどのように届けどのように広めていくかを考える配給や宣伝の重要性を感じた。

出資製作契約書からは、専門的で複雑な内容がいくつも書いてあり、今誕生している映画はこのような手続きや取り決めを経て成立しているのだと知り、映画製作というのは非常に面倒くさいなと思った。しかし、同時にその面倒さを超える喜びがあるからこそ、映画は作り続けられているものだとも実感した。

映画脚本読解(中級)
講 師:三谷一夫

今回は脚本読解から芝居をするワークショップだった。課題の脚本は『わたしのお母さん』。受講者は事前に1冊の脚本から読解に取り組み、それをワークショップで全員と共有していく。

まず、物語を3行にまとめた「3行ストーリー」を発表していく。それぞれ選ぶ言葉は違うが、大体の内容は全員一致していた。次に主人公が物語の中で果たしたい目的を考えていくが、ここで少し詰まってしまう。この目的が曖昧になっていると演じる時にもその人物が見えてこなくなる。人物は根元の部分でどう思っているのかを見つけることが、芝居をより良くさせるために重要であると感じた。

人物の目的から、その目的を達成させるのを邪魔している外的葛藤と内的葛藤を考え、この物語の中で一番大事なシーンは何かを読み解き、芝居へと移った。芝居の課題は主人公の夕子と妹の晶子が、昔の母との思い出話をするシーンと、夕子が母と言い合いになった後に、旦那の信二が夕子を慰めるシーンに分かれた。

夕子と晶子のシーンでは晶子役の受講者が行き詰まってしまった。ここはただの思い出話ではなく、姉妹で抱いている母との記憶や距離感が浮き彫りになり、それを夕子が受け取る重要なシーンだった。しかし、その前提を読み取りきれなかったのか、表面的な会話になってしまい人物同士の関係性が見えなかった。

夕子と信二のシーンでは夕子が信二に凭れるというト書きがあった。芝居を始める前に、どこにどのように凭れるのかを事前に確認しておくことが大事だと、芝居を始める前の行動にアドバイスがあった。ト書きも曖昧にしてしまうと、芝居をしている自分たちだけではなく、見ている方にも人物の関係性や心情が伝わらず、脚本読解でも芝居の中でも、曖昧な部分を残しては人物が成り立たず何も伝えられないのだと強く実感した。

前回の柳監督のワークショップでも感じたことだが、人物を曖昧なままにしてしまうとそれが身体の揺れにつながってしまったり、焦ってしまったりなど「自分」としての戸惑いが役を邪魔してしまう。人物としてその場に存在するには、曖昧なまま立つのではなく、脚本をしっかりと読解し、目的や関係性を明確にすることが芝居を成立させるための土台であると気付かされたワークショップになった。

オーディションで何が作り手の心を掴むのか
講 師:三谷一夫

前半はオーディションでの自己紹介の練習をAとBの2チームに分かれて相互に審査を行い、後半は脚本を使ってグループオーディションの練習を行った。

AとB、それぞれ監督やカメラ、プロデューサーなど役割やどんな映画の内容かなどを決め、オーディションが始まった。実際のオーディション同様に、スタッフの紹介から始まり次にオーディションを受けている側の自己紹介へ。特技、好きな映画、役者になりたいと思ったきっかけなどそれぞれ、自分なりの言葉で話していく。その中でも審査側が気になった人に質問をしたり、全員に質問をしていく。

受講者が1人ずつ良かったと思う人、一緒に映画を作りたいと思った人を2人ずつ挙げていく。何回も名前が挙がる人もいれば誰にも選ばれない人もいた。何回も選ばれる人の共通点としては、声が大きくて聞きやすい、質問した時に答える時の表情が良い、決められた内容ではなくその場で自分の思ったことを話している、など。やはり声が通っていて聞きやすいとそれだけで印象に残るのだと実感し、声の大切さを知った。全員に共通してアドバイスを受けたこととしては、「就活みたい」「みんな自信がなさそうに見える」「自分以外の人が受け答えしている時の顔がずっと下を向いている」など。

また、1人の審査側の受講者が「アルバイト経験から得たこと」を全員に質問した際に、誰もアルバイト経験から得たことを自分の長所に繋げていなかったことも指摘された。せっかくの自分をアピールできる質問をされたのに、ただ気づいたことや得たことだけを話すだけになってしまい、質問者側の意図を汲み取ることができなかった。これまでにオーディションを受けたことがある人も無い人にとっても、これからに繋げていく材料を得た機会になった。

グループオーディションでは「カラオケ」というオーディションオリジナルの脚本を用いて行われた。新宿深夜2時半カラオケボックスの中、男2人(宏司と卓也)が歌うところに焦燥した女が1人(里美)乱入し、女が歌い始めたと思ったらその友達の女(ゆい)が入ってくる、という設定のシーンだった。脚本のト書きには最低限のことしか書いていなかったため、必要な動きは俳優自身で考える必要があった。宏司と卓也は酔っ払っているのでテンションを上げる必要があるが、そこをどう上げるのかが課題になった。里美は歌う時にこぼれる感情が課題に、ゆいは入ってくるタイミングや焦燥した里美をどう励ますのかが課題になった。

歌うまでの集中力はあっても歌が始まると集中が切れてしまったり、こぼれる感情にフォーカスをしてしまって歌えなくなるなど「感情がこぼれる」というものを歌に変換する力がまだまだ足りないのだと実感した。
今回、自己紹介にはテクニックがいることや、オーディションで審査側が何を見たいのかをよく考えることを学んだワークショップとなった。

テーマ:地域映画の作り方
講 師:三谷一夫
ゲスト:安田真奈(映画監督・脚本家)

本日は安田真奈監督にゲストに起こしいただき、地域映画の作り方について講義いただきました。

安田監督の経歴をご紹介いただいた後、プロデューサーの三谷さんが2018年にスタートされた映画シリーズ「ぼくらのレシピ図鑑シリーズ」の第1弾であり、安田監督が脚本・監督を担当された映画「36.8℃サンジュウロクドハチブ」を全員で鑑賞しました。
安田監督には地域の皆様に愛される映画づくりコツをお話いただき、三谷さんからはシリーズの特徴や他の商業映画との違いについてお話いただきました。

「ぼくらのレシピ図鑑シリーズ」は現在4弾まで発表されており、今後第5弾が制作されることが決定しているようです。

安田監督が掲げる「映画は終わらないお祭り」というメッセージがとても印象的でした。このシリーズは今後もたくさんの地域に展開されていきますので、1期生からプロデュースを手掛ける人が出てくることを楽しみにしています。

安田監督の次回作に向けて、1期生からも参加できそうな話もでてきて今後の展開が楽しみです。俳優クラスからもたくさんの方が聴講に来られてとても賑やかな時間になりました。最後は全員で記念撮影!

映画監督実習⑧
俳優も脚本を書いてみよう
講 師:三谷一夫
ゲスト:安田真奈(映画監督・脚本家)

今回は「俳優も実際に脚本を書いてみよう」ということをテーマに安田監督に「脚本の基本的な構造や書き方について詳しく講義いただきました。
俳優も脚本を書いてみることで、脚本のとらえ方が大きく変わるんですね。

課題脚本は監督の作品である『あした、授業参観いくから。』とオリジナルの脚本を用いた。『あした、授業参観いくから。』は、23分の短編映画で、全く同じ会話が五人の生徒の家庭で繰り返されるというもの。この作品を授業の中で受講者全員で観る時間が設けられた。同じストーリーでも、ト書や家庭環境、人の関係性が変わればセリフの言い方や行動も変わってくるという話を経て、事前に配られていた脚本に移った。

監督が2人のペアを振り分け、受講者たちはどんな人物か、その人物たちの関係性や設定を考えていった。「日曜日遊びに行かない?」と誘う。しかしその反応は良くない。と話が進んでいく。なぜ反応が良くないのかやなぜ遊びに誘ったのかは同じセリフでも、恋人同士なのか友達なのかによって言葉の重みや、距離感でいくつものパターンが生まれることを実感した。

その後は自己紹介の時間があった。自分のキャッチコピーを話し、最近の印象に残ったことを話す、という最初は難しく感じたが、昨日のオーディションのように堅い雰囲気はなく、受講者それぞれが自身の特徴をよく捉えられており、生き生きとした時間が広がっていた。

「役者の演技力や、撮影、美術、照明、音楽など、みんなの力でシンプルな脚本が豊かなシーンになっていく。脚本に興味を持って、完成された映像と見比べてたりしてほしい。役者も脚本を書いてみると、監督や脚本家の想いがより理解しやすくなる」とコメントがあった。

これまでたくさんの脚本を読解してきたが、読むだけではなく役者も脚本を書いてみることで、芝居の質も変わるのだということも実感した。

芸能事務所の仕組みを知ることから始めよう
講 師:三谷一夫
ゲスト:津嶋敬介(ホリプロ取締役)

今回は前半に『二十歳の原点』を用いた脚本読解と、後半にはホリプロの津嶋さんをお迎えして「芸能事務所の仕組みを知る」というテーマでの授業だった。

『二十歳の原点』は、高野悦子さんという方の日記が映画になっている、実話からできたものだった。これまでの脚本読解ではフィクションのものばかりだったが、今回はそうではなかったので、考える深さがこれまでとは違うような気がした。いつも通りに受講者全員で自分たちが考えてきた主人公の葛藤や人柄などを共有し、脚本を深めていった。その中の一つに「柔軟性」という言葉が印象に残った。主人公が他の人に言われたことをすぐに受け止めることに対して柔軟性があると考えた人と、それは人に流されてしまっているから柔軟性が無いと考えている人がいた。受講者の性格によって映画の中の人物の捉え方が、同じ言葉でも意味が違うことがあった。

普段の私たちが持っている短所を長所として、長所を短所としても表すことができるように、人物の見方にはたくさんの可能性があるのだと改めて感じた。脚本読解以外にも、受講者自身が普段日記を書くのかだったり、書いた日記を人に見せたいか、日記を書くことでどのような効果があるのかなど、かつて存在していた主人公に寄り添うために自身と比べてみるという時間があった。役と向き合うことは自分と向き合うことでもあり、誰を演じるにしても全ては自分が軸になるのだと実感した。

次にホリプロの津嶋さんによる「芸能事務所の仕組み」についてのお話。津嶋さんがホリプロに入社したきっかけから、タレントの売り出し方、タレントとマネージャーの関係性など、普段では聞けないようなことを教えてもらい、私たちが飛び込んでいる世界にはまだまだ知らないことがあった。

後半には受講者たちの自己PRの時間があった。事前に津嶋さんからは、「特技や趣味を言うのではなく自分が体験したエピソードを話すこと」とアドバイスがあった。アドバイス通りに自己PRをしていくと、受講者それぞれの個性がよく際立ちいつもより魅力的に見えた。

最後に津嶋さんからは「自分の落ちた作品を観て、なぜ自分が落ちたのかを考える」「役者は人の心を動かす仕事」「頑張ったから成功するわけではないけど、頑張らないと成功しない」と様々な言葉があった。どの言葉にも共通することは、「人間力が全てにつながる」ということだと思った。普段の生活をどう過ごすのか、自分と向き合う時間を作っていきたい。

テーマ:海外合作企画
講 師:三谷一夫
ゲスト:プリンセス・アンポール(映画監督・プロデューサー)

今回は映画監督・プロデューサーのプリンセス・アンポールさんにお越しいただき、国際共同制作について学んだ。始めにはプリンセスさんのなぜ映画をやろうと思ったのか、 どんなことをしてきたのか、お話があった。

最初から映画の世界に踏み込んだわけではなく、クリエイティブなことには興味があり韓国にも興味があったので、韓国の大学でメディアを最初に学んだという。そこで学んでいる時に、48時間で1つの短編映画を完成させるという「48時間プロジェクト」に出会い、映画製作が魅力的で素晴らしいものだと知り、そこから映画監督という夢を持った。

その後、まずは自分で映像を作ることが大切だと思いyoutubeで学生生活を撮ってそれを投稿しながら撮影や編集のスキルをあげていったという。そして日本に来日してからは、デザインと映像制 作の会社に入ったが、自分のやりたいことは「映画」だと改めて思い直し、去年から映画監督として活動している。

次に国際共同制作について。国際共同制作とは、各国のプロデューサーと制作費や制作スタッフを分担し、知恵を集結することでより大型で高品質の映画を制作することができるも の。国内での予算調達が困難な場合に海外からの資金調達や映画祭への選出可能性が高まるなどのメリットがあるとお話があった。国際共同制作の始め方については、「国際的な視点 で脚本を書く」「ポートフォリオを作成する」「フィルムラボに参加する」など。

プリンセスさんも映画祭やフィルムラボに参加した際には、どんどんいろんな監督に話を聞いてみたり名刺を渡すなどをしていると聞いて、上記の3つ以外にも自分から動くことが大 切なのだと実感した。プリンセスさんは今、初の長編映画を作っているという。どんなものが描かれた映画になっているのかとても楽しみだ。

映画脚本読解(中級)+演技実践
講 師:三谷一夫

今回は前回の続きである『二十歳の原点』を用いた芝居のワークショップだった。

全て2人でのシーンだったが、今までとはワンシーンが長くセリフの量も多かった。セリフの量が多いとそれに気を取られ、役に深みがなくなってしまったりフラフラと動いてしまったり、とにかく話を先に進めようとしてしまいその時の気分を大切にできていない瞬間が多くみられた。

『二十歳の原点』に登場する人物で主人公の先輩の「大山」という人物がおり、大山の人柄としては「リーダー気質があり周りを見れる」というように「強い人物」だった。その強い人物がフラフラ動いていたり手持ち無沙汰になっているとその人柄が全く見えない。そのことを指摘された受講者がアドバイスを受けもう一度芝居をすると、大山という人物が浮かび上がったような気がした。動き一つや距離感から生まれる空気というのは人物も作り上げていくのだと実感した。

他のシーンでは「・・・」というセリフについての話があった。シーンの始まりに「・・・」があるのにそれを無視して言葉があるところから始めてしまい、そのシーンでの見たいものが見えないような気がした。「・・・」はただ黙るという意味ではもちろん無く、心の中で言っていることである。それは俳優が考えることで、それを無視してしまうと役としての揺らぎが見えなくなってしまう。

こちらもアドバイスを受けた受講者がもう一度芝居をすると、言葉はないのに2人の間に何か見えるものが生まれた。小説や脚本にある「・・・」は読んでいる時はそのままにしがちだが、役を考えるときや演じるとなった時は1回そこで立ち止まり、人物が何を思い何を言うのかを考えることが大切だと学んだ。

三谷さんからは終始「気分を大切にして欲しい」や「深く想像すること」とアドバイスがあった。そして「脚本全体におけるシーンの役割までつかめているかというとまだまだだが、全体的に受講者の芝居は最初に比べると引き締まってきた」と話があった。確かに、芝居を重ねていくうちに、受講者の俳優としての姿が変わっていっているのではないかと思った。これからもずっと変わり続けられるよう、普段の生活で起きる小さいことから大きいことまでを、自分の何かにできるように意識していきたい。

落語で学ぶ俳優の技術
講 師:三谷一夫
ゲスト:桂雀太(落語家)

今回は前半に落語家の桂雀太さん、後半には助監督や監督、プロデューサーの向田優さんをお迎えしての講義だった。前半の桂雀太さんには、落語が始まる前には落語についてのことや落語家についてなどをお話していただき、その後には「天狗刺し」という、天狗のすき焼き(天すき)で一儲けしようと企む男が、鞍馬山で修行中の坊さんを本物の天狗と勘違いして捕らえ、京の町へ担いで帰る珍道中を描いた上方落語の滑稽噺と「夢の皮財布」という、酒飲みで怠け者の魚屋・政五郎が夢で拾った大金入りの革財布をめぐる有名な人情落語の二つを実際に間近で見ることができた。

二つともの噺に、ものすごく惹き込まれた。落語が終わると質問をする時間が設けられ、その中で「どの噺をするかはいつ決めているのか」という質問があった。その質問に対して「“枕”という落語を始める前に話す導入の話で、お客さんの反応やその場の空気を見て決めることが多い」とおっしゃっており、その場のお客さんとの関係で噺を選び作り上げていることを知りとても印象に残った。また「会場が一体化することは呼吸が一体化することであり、大きな生命体みたいな体験ができると一番良い」と語った。

質問の後には先着5名で落語を体験できる時間があった。時間は20秒ほどで、落語が初めての受講者でも楽しむことができた。落語以外にも雀太さんのお話に笑いを誘われる瞬間が多くあり、これまでの授業では映画にフォーカスを当ててきたが、落語という新しいジャンルを教えてもらうことで、知らなかったことからでも映画に通ずるものがあると実感し、今までとは違う体験ができた。

後半の向田さんの授業では「カチンコがなるまで」をテーマに映画制作についてのお話があった。授業の最初に、最近あった出来事を2行ほどで書く時間があった。受講者それぞれが考え発表していく。一人一人にエピソードが違ったが、その人のエピソードを違う人が話すとまた違った印象になるかもしれない。向田さんから、脚本とは「なんでもない出来事から爆発するものだ」とお話があり、脚本の種となるものは私たちの日常の些細な出来事の中にあるのだと実感できた。

また、脚本の中にある「ト書き」については、「ト書き一つでお金と時間と人が動く」という話が印象に残った。普段私たちが読んでいるセリフやト書きには演じる人物の背景だけでなく、作品を作るために欠かせない要素も詰め込まれているのだと脚本に対して新しい考えを持つことができた。他にも香盤表や絵コンテを作成するなど制作部や演出部の仕事を学び、多くの準備を経てやっとカチンコが鳴らせることを改めて知った。映画制作はカチンコがなった時にさらなる日常が始まり、日常を活かしながら日常を壊すものだとお話があり、映画制作というのは全ての今ある「日常」の延長線上にあるものなのではないかと感じた。

今回の授業では芝居は行わなかったが、いつも以上に学びがあったのではないかと思った。落語は映画とは違うように見えても、演じるという部分は共通するものであったり、映画制作のことを俳優がよく知っておくことは、作品作りに対しての新しい熱量にもなるし、これだけの準備があって俳優がカメラの前に立てるということを知っておくことで役に対してのアプローチの方法も変わってくるのではないかと思った。映画から映画を学ぶ、芝居から芝居を学ぶだけではなく、私たちがこれからも学んでいきたいことは全ての日常に転がっているのだと実感し、視野を広く持ってたくさんのことを知っていきたいと思えたワークショップだった。

テーマ:外国映画配給・国際映画祭
講 師:三谷一夫
ゲスト:今井太郎(映画プロデューサー)

今回は映画プロデューサーである今井太郎さんをお迎えし、「外国映画の配給・国際映画祭」をテーマに授業が行われた。今井さんは「自己紹介や生い立ちを話した方が制作や配給につながる部分が多いのでそこから話していこうと思う」と語り授業が始まった。

今井さんはもともと中学、高校の時から映画が好きで地元の映画館に通っていたという。しかし阪神・淡路大震災をきっかけに「好きなことがいつできなくなるか分からない」「この まま大学に進学するだけでいいのだろうか」と考えるようになり、高校卒業後に映画を学びにアメリカへ。6年アメリカに滞在していたが、ビザが切れ日本に帰国。当時は映画業界が 不況で映画会社に入るのが難しかったため、映画を作るための資金を貯めようと一度就職して正社員として働くことを選択した。

10年働いた後、シネアスト・オーガニゼーション大阪という、助成金から映画を作るプロジェクトで通った「泣き屋」の仕事に就いた女性の奮闘を描いた『見栄を張る』では「泣き屋」という日本独自の文化は海外でも通用するのでは と考え、プロデューサーとして参加。日本では30館、タイでは100館で上映された。このことについて「よりローカルな方がグローバル」とおっしゃっており印象に残った。

今井さんが配給会社の「foggy」を始めたのは、映画を制作し色んな映画祭に行くとたくさんの映画に出会うのに、劇場公開されていない映画や行き場のない映画があったことや、配 給の理論は分かってもどれだけお客さんがくるのかマーケットについて勉強したいと思ったことがきっかけだった。配給作品としては、サンダース国際映画祭審査員特別賞を受賞し た、フィリピン映画の『レオノールの脳内ヒプナゴシア』や現在公開中の『これからの私たち』がある。配給とは、映画の権利を借りる(買い付け)契約をして劇場に営業をしていくこ と。いくら良い映画でも劇場に断られると上映できないので、営業するのが難しいというお話があった。

これまでの授業ではビジネスメインの製作委員会システムに関する話はあったが、今回は海外をからめた制作や配給といった違った視点でお話を聞くことができた。映画は作ることだ けでなく、その後にどのようにして上映されているのかを改めて深く知ることのできた授業となった。

個々の課題と対策指導
講 師:三谷一夫

今回は『ハッシュ!』を用いて脚本読解と芝居を行った。

いつもの脚本読解の通りに主人公を全員で考えていくが、朝子と直也と勝裕の3人に大きく分かれた。特別大きな変化をしていないことや、登場人物に多くの障害や葛藤となっているものがたくさんあることなどから、受講者たちは主人公を誰と読めば良いのか頭を悩ませた。しかし、受講者それぞれがなぜその人物を主人公として読んだのかについては、はっきりとした理由を持っていた。脚本読解とは、三谷さんも前に言っていたように答え合わせをするものではなくどのように読み取り、どの人物から物語を捉えるのかを考える時間なのだと改めて感じた。

芝居は6つのシーンに分かれて行われた。その中でも一番難しそうだったのが、直也とその母の克美のシーン。直也の家に突然母の克美が来て直也に色々なことを言ってくる、という場面だったのだが、克美のペースが崩れてしまうと一気にその場の空気が切られたような感じがしてしまった。この親子の力関係やこれまでの背景をしっかりと持ちながら演じる必要 があるなと思った。また、ト書きについての指摘もあった。それは、ト書きに「扉を開ける」とあった時に、その場に扉はないのにエアーで開ける動作をしてしまうこと。開けるマネをすることになるのなら無理にエアーの動作をするのではなく、他の動作で表現した方が良いとアドバイスがあった。

ト書きをそのまま再現するのではなく、その場の状況に合わせてどう表現するのがベストなのかを考える必要があるのだと学んだ。そして、ト書きはただの段取りではなく、ト書きの前には必ずその人物の「気分」があるとアドバイスがあり、その人物がどのような気持ちでその行動を起こしているのかを考えるのが大切だと学んだ。

他のシーンで受講者の多くに共通していた課題が「動いてしまう」こと。セリフの有無に関わらず、フラフラしてしまう癖が出てしまっていた。三谷さんからは「そんなに動かなくても、カメラは心の揺らぎを映してくれている」とコメントがあった。動きばかりで表現しようとしたり身体で相手のセリフを聞くのではなく、人物の内面を大切にすることを意識して いきたい。

最後に三谷さんからは「皆、自分たちの課題が分かってきたように思う。だんだんと芝居が削ぎ落とされていくとセリフではないところで勝負ができてくる」とコメントがあった。 これまでのワークショップから、受講者の芝居はどんどんと良くなり、芝居も余計なものがつかなくなってきたように思う。次回で最終回となってしまうので、これまで学んできたこ とを存分に活かして最後のワークショップに取り組みたい。

演出家実習
講 師:三谷一夫
ゲスト:上田誠(ヨーロッパ企画・演出家・脚本家)

アジアシネマアカデミー俳優クラス、最後のゲストにヨーロッパ企画・脚本家・演出家・監督である上田誠さんをお迎えしてのワークショップだった。

上田さんが大学1年生の時に劇団のサークルを立ち上げたものが今のヨーロッパ企画で、劇団だけではなく『ドロステのはてで僕らは』『リバー、流れないでよ』などの映画にも携わっているため、演劇と映画を絡めてのお話がたくさんあった。その中で、「映画は世界線を意識した方がいい。演劇が日本以外でやっていても脅威にはならないが、映画や映像はある部分で世界一だったり、国外で撮られた映画が良かったら自国の映画と比べられてしまう。」という言葉が印象に残った。また「構造は海を越える」という言葉も印象的だった。

上田さんはパズルっぽい構成が得意で、それを活かせば予算がなくても構造で戦うことができると話していた。実際に京都で撮影された『リバー、流れないでよ』は2分間がタイムリープするというシンプルな設定だが、その構造の面白さが日本よりもフランスの方に集客を集めた。その他にも「構造」を意識した作品をいくつか見せてもらい、脚本上や構造での工夫が面白さを生み出すことを知った。

ワークショップ中盤からは実際に「構造」を意識した短編を撮影した。脚本は上田さんが受講者1人1人に当て書きをしてくださり、以前にゲストで来てくださった武村さんが撮影を担当してくださり短編を作っていった。

狭い空間に大人数での撮影だったため、自分がどのタイミングで動けば違和感なく映れるのかだったりカメラの動きを良く見ながら動く必要があったため、「構造」を意識した作品での撮影も人と人との連携がとても重要だなと感じ、今までの作品の構造とは違っても、自分の芝居だけではなくカメラやその他の空間、他の俳優との関係性の中で作品が出来上がっていくことを実感した。何テイクも重ね、撮影が終了した後実際に観てみると、想像を上回る「構造」を意識した面白さが映っていた。

最後には舞台と映画の違いについての話があった。舞台役者は稽古期間から千秋楽まで、長く作品作りに関わることに対し、映画俳優は撮影から撮影終わりまでという短い稼働時間になってしまう。だから「待ち」の俳優が多くなってしまう。いかに芝居以外のことで何ができるのか、自分で誘ってみたり自分から動くことができるのかが重要だという話があった。

また、映画と舞台の終わり方について、舞台は最後に人数が増えていった方が良く「耳や音」a由来に対し、映画は一つのことに向かっていく方が良くセリフよりも所作や佇まいなど「画」由来であるという話もあった。似ているようで似ていない舞台と映画。元々演劇をやっておりそこから映画を始めた上田さんから聞くお話は新鮮で、人の集まりで力を合わせて何かを作ることの楽しさを知ることができたワークショップだった。

テーマ:映画の企画・プレゼンテーション
講 師:三谷一夫

アジアシネマアカデミー企画プロデュースクラス最後は、受講者の考えている企画のプレゼンを行った。

当日は5名の企画プロデュースの受講者と俳優クラスの数名が聴講で参加し、ただ企画を発表するだけではなく具体化するにはどうすれば良いのかをクラス問わずに意見を交わし合った。 上がった企画には地域を舞台とするものが多く、他には海外のものや、このワークショップをベースにしたものなど様々なものがあった。

地域映画を企画した受講生は、場所というより人を意識し、自身の知り合いに掛け合い地域の自治体と繋いでもらうことや、地域の料亭を舞台にしたものを考えていた。この企画に対して、自治体を引っ張るには「有名なものがない、何もない地域の方が映画で盛り上げられるのではないか」「料亭を利用するなら〇〇周年という節目を意識すると映画を作ってみたいと思ってくれるのでは」といった意見が挙がっていた。

また、映画の制作チームと自治体との間でスムーズに進めるために自治体の人にどれだけ映画を知ってもらえるか、どれだけ映画を理解してもらえるのかという課題や、映画にする際に誰に監督をしてもらいたいのか、誰に演じて欲しいのかという部分までも考えないといけないとお話があり、企画は映画のベースになるため細部まで考え尽くす必要があるのだと改めて感じた。

それぞれの受講者のプレゼンから、それぞれの多様な想いや考えを知ることができ、企画の段階ですでにワクワクとした気持ちになった。今回でこのアジアシネマアカデミー1期は終わってしまうが、これからも企画を持ち続けてこれまでの出会いを活かして、企画で留まらず映画として形にしていって欲しいと感じた。

グループ発表会
講 師:三谷一夫

アジアシネマアカデミー俳優クラス、最後はグループでの芝居を行った。課題脚本は『ハッシュ!』と『フラガール』を用いた。

2つとも2シーンずつ5グループに分かれ、事前にグループでの話し合う時間が設けられ芝居へと移った。『ハッシュ!』では直也、勝裕、朝子、3人の関係性を勝裕や直也の家族に打ち明けるシーンと、エミが勝裕を引き止めるシーン。『フラガール』は小百合の父が亡くなってでも小百合が踊ると決意するシーンと、フラガールたちが親の死に目よりも「踊る」と言ったことを「踊れ」と言ったのは自分だ、とまどかが庇うシーン。最後なので、芝居を止めたりはせずにシーンに取り組んだ。

芝居が初めての企画プロデュースの受講生も参加しての芝居で、セリフの量もシーンの長さも長く、芝居が止まってしまうかと思われたが、どのグループも止まることはなかった。 「気分を大切にする」「距離感」「相手を見て聞く」など、これまでのワークショップで得たことを受講者1人1人が大切にしていたように思う。

芝居が終わった後は、『ハッシュ!』『フラガール』の1作品3人ずつ、芝居が良かった人を全員で選びそれぞれの作品で3位までが発表された。選ばれた人には映画のDVDが贈呈された。今回の芝居で選ばれた人も選ばれなかった人も、芝居が始まった去年の11月に比べると別人のような変化が見られた。

最後には円になり1人1人アジアシネマアカデミーで感じたことを言葉にしていった。「芝居をしたことがなかったから非日常を考えることの楽しさを実感できたし、最初はみんなと話せなかったけどだんだんみんなと仲良くなれたので、アカデミーが終わっても脚本を読むことをまた集まって繋がりを持ち続けたい」「感情を出すことをしてこなかったけど、芝居をすることで感情を取り戻した気分になった」など、アカデミーで芝居を学んだだけではなく、それぞれ自身の中身までも成長を感じられた半年間になった。

三谷さんからは「課題を出しすぎたかと思ったけれど、止まることなくできてすごい。毎回の日誌も楽しみにしていた。芝居や将来に行き詰まった時は、大勢に喜んで欲しいと思うのではなく、自分のためにはもちろん、自分の近くにいる人に喜んでもらいたいと思い続けること。そして上手い俳優ではなく、強い俳優になっていってほしい」とコメントがあった。 主催の普照さんからは「みんなが活躍できるような仕事を作っていきたい」とコメントがあった。せっかくこのような機会で同じ夢を持った人たちと出会えたことが無かったことにならないように、これからも繋がりあい、それぞれの夢に向かって進んでいきたい。

テーマ:オリエンテーション/京都の映画史(俳優クラスとの合同授業)
講 師:三谷一夫
ゲスト:吉田馨(元京都映画祭事務局長)

映画人養成スクールアジアシネマアカデミーの第2期が2026年5月に始動した。初回は俳優クラスと企画脚本クラスの両クラスが集まった。

オリエンテーションから始まり、レギュラー講師の三谷さんやスタッフの挨拶があった後、第2期生の自己紹介が始まった。
1期と同様、受講者には事前に自己紹介シートを作成してもらい、今回もそれぞれの人となりがよく分かるものになっていた。

このアジアシネマアカデミーを受けた動機として「前に芝居をやっていたことがあってもう一度やってみようと思った」「何も経験はないけど芝居がしたくて応募してみた」「普段は会社員だけど、別の人間になってみたい」「短編を撮りたい」など参加理由は様々だった。これから俳優クラスは全20回、企画脚本クラスは全10回、ここで出会った仲間たちとたくさんのことを学んでいきたい。

オリエンテーションと自己紹介が終わった後は、早速第一回のゲストである吉田馨先生をお迎えして、京都の映画史についての授業が行われた。第1期の時にも吉田先生から京都の映画史について学んだが、授業で取り扱われた映画が前回とは違い、また新しい歴史を学ぶことができた。

また、日本映画発祥の地が会場の近くに位置していたり街全体が撮影所であったことから「京都には日常の中に映画がある」のだと再認識した。配られた資料には映画の歴史について細かく書かれており、とても興味深いものがたくさんあった。2時間にわたり映画史を学んだ後、受講者たちから質問がいくつもあり、受け取るだけではなく自身が感じたことを共有し合い、とても深く学びのある時間となった。

人数が少ないからこそ、自分の持った意見を発信し、互いに高め合える時間にしていきたい。そして第2期では1期とは違うゲストも予定されているので、これからどんな新しいことを学べるのかが楽しみだ。

グループ発表会
講 師:三谷一夫

俳優クラス初回は『夏がはじまる』の脚本読解を経ての芝居に取り組んだ。

脚本読解に取り組む前に「ものづくりの感覚を養う」「自分の頭で考える」「自分の言葉を持つ」をテーマに話が進められた。映画の現場にはどんな部署があるのか、企画脚本にどれぐらいの年数を要するのかなど、俳優はただ芝居をするだけではなく俳優が現場に入るまでに行われることをちゃんと知ることが大切なのだという話があった。

また、俳優は日常でも芝居する数を重視しがちだが、そうではなく色々な本や脚本を「読む」色々な映画を「観る」色々な音楽や人の話を「聞く」というインプットが重要であるということも学んだ。三谷さんから、「脚本は映画の設計図なので脚本をもらったら‘‘設計図をもらった’’と考えること、読みとく深さが俳優の質を決める」と話があり、俳優がいかに短い期間で脚本を読み込みどれだけのものを準備していけるかが重要なのだと学んだ。この話を経て、脚本読解へ。脚本を読み込むためにはこの話の主人公は誰なのか、話の3行ストーリー、主人公の葛藤など考えることは様々。

今回の『夏がはじまる』では受講者全員が主人公を「ななえ」と捉え、それぞれの言葉で3行ストーリーを共有していった。次にななえはどんな人なのかという人物像について考えた。ななえに限らず、人物像は3個4個で収まるものではない。少なくても10個挙げることが大切で、多面的に考えることが芝居にもつながっていく。人物の葛藤について、外的葛藤は脚本には書かれているが、内的葛藤については脚本に書かれていないため難しく、行き詰まっていたが、受講者それぞれがしっかりと言葉にして考えを共有できていた。

脚本読解を経て芝居へ。 ななえと姉のみほとのシーン。全体的にしっかりとお互いを受け取り切れておらず芝居が流れてしまっている印象だった。2人の関係性をよく考えることや、芝居が始まってからの時間を大切にすることなどアドバイスがあった。 脚本読解は答えを探すためのものではなく、自分の頭で考え、言葉にすることが大切だということが芝居をすることでより実感できたのではないだろうか。受講生がこれからの全20回でどう変わっていくのかが楽しみだ。

テーマ:映画業界/映画ビジネス
講 師:三谷一夫

企画・脚本クラスの初回は、去年の日本映画ベスト10には何がランクインしているのか、1年間の映画製作本数、興行収入の内訳など「映画業界・映画ビジネス」をテーマに、三谷さんによる基礎知識の授業だった。

始めに、去年の日本映画ベスト10には何がランクインしているのか受講者たちで考えていく。「コナン」や「ドラえもん」『国宝』などが挙げられ、それらがランクイン。他の作品には「ガンダム」「鬼滅の刃」などアニメ映画が多くランクインしており、半分がアニメ映画で占めていた。また、日本で製作された694本のうち東宝が69%の31本、松竹・東映が28%の67本、その他の会社が残りの596本を占めている。東宝に関しては、31本で全体の69%を占めているので1作品の影響がどれだけ大きいのかを実感した。

次に映画ビジネスについて、「製作」と「制作」の違いについての話があった。「製作」は企画・資金・配給・宣伝などの権利を持ってビジネスにしていく役割を持っており、制作は脚本・キャスト・納品などの役割があると知った。これらの映画業界や映画ビジネスについて、今までは聞いたことのある言葉だけだったのが、その内容や違いについて知ることで少しは映画や映画製作についての知識が深まったのではないだろうか。

最後には企画・脚本クラスの受講者がどんな企画を考えているのかについての話があった。俳優クラスのみんなを当て書きしたものや、モキュメンタリー、タクシーの中での会話劇、AIを使ったものなどたくさんの企画案が出てきた。

今回は1期と違って、脚本をたくさん学ぶ時間があるので、脚本を完成させて撮影段階までいけるといいなと思う。また、三谷さんからは「将来、脚本家やプロデューサーにシフトしろということではなく、俳優自身も脚本を書くことで自分と向き合うことができるので、俳優クラスの人も脚本を書いてみて欲しい」とコメントがあった。 これからの授業でも映画業界のことを知りつつ、脚本を学びいろんな可能性を知っていけたらなと思う。

映画監督実習①
講 師:三谷一夫
ゲスト:風間太樹(映画監督)

最初に風間監督から「演出では芝居の技術を教えるのではなく役者と対話をすることで役と向き合ってもらっている」「自分をどう使っていくか」「自分自身をうまく使って欲しい、自分自身の葛藤や経験を役に向けて欲しい」など、「俳優が撮影現場で演じるまでの準備や監督との関わり、役を共に作り上げていく過程に触れること」をテーマに話があった。

「俳優が現場に立つまで」に関しては、衣装合わせや本読みがある。ここではただ衣装を合わせるだけではなく、監督と俳優がお互いに歩み寄って話す機会でもあるので、俳優は衣装合わせまでに脚本をしっかり読み込むこと、色々な意見を言うと嫌がられたり怖いと思うかもしれないけれど、自分を助けるつもりで分からないことはしっかりと聞くことが大切だと学んだ。本読みでは俳優の声の特徴や、本読みで隆起する感情の点を作っておくことを目的としていると話があった。

他にも「魅力的な俳優とは」や「カメラの前に立つこと」「自分なりを獲得すること」にも焦点を当て、いくつもの内容の濃い話を聞くことができた。芝居を始める前に、俳優自身の苦手な状況や苦手な人、居心地がいい人、課題脚本の登場人物で似ている人や共感できる人など、監督と俳優の共通言語を獲得するために受講者1人1人との面談が設けられた。これらを経て、芝居へと移った。課題シーンは、男女の日常的な会話と、同じ場所に居合わせた男女が初めて会話をするシーンの2つ。映画の撮影ではいきなり本番ではなく、その前に段取りというものがある。その段取りを行ってから、受講者たちの芝居に入っていった。

1度芝居をした後に監督が演出をしていく。隣に座るのではなく対面に座ってみよう、セリフ間はあけずにつめてみること、相手が脚本に書かれていない行動をした時にしっかり反応することなど、受講者それぞれに違った演出がされていたので芝居する人ごとに見え方が違い、見る側も学ぶことがたくさんあった。また「言葉のトーンとペースではキャラが作れてるけど、深みはない」「間延びしてしまうと何を見せたいのか分からなくてカットされてしまう」など、自分自身のキャラクターだけを考えるのではなく2人の関係性をもっと考えることや、間の取り方にもアドバイスがあった。

最後に風間監督からは、監督と俳優がコミュニケーションを取ることでお互いが歩み寄り、俳優の知らずに出てくる個性やどう演出と向き合うのか。また、自分を通って表現される機微、俳優自身が「弱い」「嫌い」「苦手」な物事を自己理解することなど話があり、自分自身をうまく使うこと、対話をすることや自分自身と向き合っていくことの大切さを実感できたワークショップとなった。

映画脚本読解(基礎)
講 師:三谷一夫

今回は前回の『夏がはじまる』の登場人物についてを考えたり、新しい課題である『父のこころ』を用いての脚本読解の授業だった。脚本読解を始める前に、先週の芝居を通してや、風間監督のワークショップを受けて気づいたことを受講者同士で共有した。

「初回の自分の反省点を見てそれを直そうとしてしまったらセリフを読んだだけになってしまった。セリフを読むことに一生懸命になってしまった」「この前よりかは相手を意識してできた」「自分の性格が滲み出てしまっているからどう役に振り切っていくのかを考えていきたい」など、このアカデミーが始まって芝居をしたのはまだ2回だが、それぞれがよく自分の課題について考えられていた。

本題の脚本読解へ。まず『夏がはじまる』の役の核心を掴むために、性格や背景・履歴やエピソード・寝る前に何を呟くのかの主に3つの項目に分けて考えていった。この中でも人物の履歴や呟きを具体的に考えることが重要になってくる。母と父が出会ったエピソード、ななえと姉の幼い頃のエピソードなど、脚本に書かれていないことを想像して受講者それぞれがしっかりと言葉にしており、役の核心をだんだんと掴んでいった。この役の核心について考えることはこれから向き合う脚本全てで行っていき、芝居に繋げていきたい。

次に『父のこころ』の脚本読解へ。この脚本でも主人公は誰なのか、それを元に3行ストーリーや主人公の葛藤、目的、肝となるシーンを考えていく。主人公は父の健一と捉えた受講者と宏志と捉えた受講者に分かれた。このように主人公を誰と捉えればいいのか迷ってしまった時は「作り手は何を観客に見せたいのか」を考えること、と言った話があった。そのように考えると、今回は宏志を主人公として捉えて読解を進めていくことになった。宏志の核心を掴むために、宏志はどんな人なのか、どんな仕事をしているのか、暮らしはどんな暮らしなのか、家族と暮らしているのか1人で暮らしているのかなど、具体的に考えていく。次に葛藤を考えていくが、いつも行き詰まってしまうのは内的葛藤。内的葛藤をきちんと捉えきれていないと、芝居の揺らぎに繋がっていかない。

また脚本全体で肝となるシーンがどこなのかも俳優はしっかりと分かっておかないといけない。そして『父のこころ』は何を描いた話なのかについて考えていくと、家族の話や親子の話という意見があったが、ここについても具体的に考えていかないといけない。『父のこころ』は父と息子の話であり、家族の話であることも親子の話であることも人間ドラマであることも確かだが「家族の話」と「父と息子」との話とでは大きく違ってくる。三谷さんからは「俳優が揺れているところが一番みたい。俳優は気持ちを準備していきたいと思うけれど。何を見せたいシーンなのかをしっかり抑えて現場に入る。そしてそこで起きる俳優との芝居で気持ちの揺らぎが出ればいい。オーディションではセリフを完璧に言えるかどうかを見ている監督はいない。俳優の気持ちが揺れているのかどうか」という話があった。今回の脚本読解を通して役に向き合う際、脚本に対しても役に対しても具体的にしっかりと考えていくことの大切さを強く実感した。

第1期レポート

2025年11月1日〜2026年3月15日

テーマ:オリエンテーション/京都の映画史(俳優クラスとの合同授業)
講 師:三谷一夫
ゲスト:吉田馨(元京都映画祭事務局長)

映画人養成スクール第1期、アジアシネマアカデミーが2025年11月1日に始動した。これからの会場となるのは、落語発祥の地であり芸能上達のご利益があるとされている誓願寺だ。

開始時間に近づくにつれ参加者が集まり始め、受付で手渡された参加者の自己紹介シートに目を通す。13:00になり予定通り開始。まず今回のスクールの講師である映画24区・三谷代表から挨拶と自己紹介。続けて、このスクールの代表である普照さん、スタッフの村山さんからも挨拶があった。

そして参加者の自己紹介が始まった。事前に準備した自己紹介シートは手書きのものや凝ったもの、シンプルなものまであり、自己紹介シートだけでその人となりがわかる。

それぞれ、今回の参加目的や経歴などを話す。参加者の平均年齢は22歳と若く、芝居経験がほとんど無い参加者が多かったり、人生一度きりなので好きなことをやってみようと思った、など参加目的はそれぞれ。
参加者同士の質問の時間もあり、短い時間ではあったが約半年間、映画や芝居を共に学んでいく仲間のことを知ることができた。

自己紹介が終わり、第1回目の講師である吉田馨先生による授業が始まった。
日本映画発祥の地が会場の近くに位置していたり、街全体が撮影所であったことから京都が「日本のハリウッド」と称される背景を再確認することができた。

また、戦争が起こると戦争の映画が作られる。社会が動くとそれを反映した映画が増える。
吉田先生の「芸術というのは世の中の動きと離れて存在することはできない」という言葉から、映画は今も昔も時代と社会に密接し発展してきた芸術なのだと気付かされたのではないだろうか。

さらに配られた資料には、映画が生まれた時代から1990年代までの映画史が詳細にまとめられており、実際にフィルムを触ってみたり映画を観ながら、2時間半にわたり学びを深めた。 参加者の年齢や参加目的などそれぞれバラバラだが、映画に興味を持ち映画が好きということは共通していることだ。これからの半年間、学んだことを吸収し発信しながら高め合え る、そんな場になれたらいいなと思う。

映画監督実習①
講 師:三谷一夫
ゲスト:谷口正晃(映画監督)

第1回目と同様、誓願寺で13:00より俳優クラスの授業が始まった。俳優クラス初回のゲストは『時をかける少女』『父のこころ』の監督である谷口正晃監督。

演技課題は『Wの悲劇』と最初からなかなかハードルの高いものだが、内容は親和性のあるものだった。

授業の冒頭で谷口監督より、1枚の紙が渡された。そこに書かれていたのは「内面の衝動を拾い上げろ、相手を反射すること、感情の流れを止めるな」というメソッド演技の一つである、マイズナーテクニックについてのものだった。これらを全員で読み、確認しあう。

そして、監督からは「今日は何回も芝居をするので他の人が言われていることも自分ごとと捉えてください」とコメント。いよいよ実技開始。

まずは全員で脚本の見方を少し学び、1組目が本読みをしている様子を見る。本読みが終わると芝居が始まった。

受講者が演じる人物は、劇団の研究生の静香とその先輩であるベテラン女優の翔。翔が自分のスキャンダルを静香に負わせようとする緊迫した場面だった。各組の芝居が終わると、監督は受講者に、芝居を見ていてどうだったかを尋ねた。「2人の関係性がよかった」「今の翔は軽く見えてしまった」など、芝居から感じとったことを共有していく。監督からは「何も感じない」「言葉が下に落ちていて相手に伝わっていない」と厳しい言葉が。他にも、静香が死体を見た時の反応はそれでいいのか、二人の距離はそんなものでいいのか、と細かいアドバイスがあった。各組、1回目の芝居からアドバイスを受け、2回目の芝居へ。どの組も1回目に受けたアドバイスに丁寧に応えようとする姿が見受けられた。

谷口監督の指導の下、授業は1時間延長して終了。最後に監督より、再び1枚の紙が渡された。ある俳優の言葉が書かれたもので、心に強く残るものがあった。そして監督から「感情は今こうやって話している時も止まることはない」と何度も「感情の流れ」についての話があった。「感情の流れが見えるか」ということはどういうことなのか、これからの芝居でも考え続けていきたいと思う。

俳優クラス初回にしては課題のハードルが高かったり、監督からのアドバイスを受け、それを飲み込むのは決して簡単なものではなかったが、個々に考えていることや感じたことを素直にぶつけていたように思う。三谷さんからは「最初だからセリフに詰まってしまってスムーズにいかないかなと思ったけど、そんな心配は無かったので半年後、どう成長しているのか楽しみだ」とコメント。

次回は2週間後、矢崎仁司監督をお迎えしての授業だ。どんな課題や発見が待っているのか楽しみだ。

映画監督実習②
講 師:三谷一夫
ゲスト:矢崎仁司(映画監督)

今回は矢崎仁司監督を迎え、『融点』と監督の最新作である『早乙女カナコの場合は』を課題にしたワークショップだった。それぞれ一冊の脚本をもらい、配役された課題に取り組んだ。最初はオーディション形式で自己紹介と、脚本を読んでみての感想に答えていく。また、受講者から監督への質問の時間もあった。1人の受講者が「オーディションで受かる人の特徴は」といった多くの人が気になる質問をした。監督の答えは「やりたがるアピールをする人は必ず落ちる」というものだった。

その理由として監督は「普段人と話す時に感情を剥き出しにせずにどこかに隠している。私自身、感情を飲み込んでも溢れてしまう感情が美しいと思っているので、絶対にやりたいです!と表現されてしまうと引いてしまうから」と答えた。多くの人は、オーディションという場では熱量をアピールすればするほど良いと思っているはず。時にはアピールを求められることがあるかもしれないが、監督のこの言葉から新たな視点が発見できたのではないだろうか。

自己紹介が終わり、芝居へ。最初に取り組んだ『融点』では1組目は本読みから行われ、次にリハーサル、本番、というように映画の撮影同様にカットを割って撮影を行った。監督からは、「空気感が作れるまで、恋人同士だったら恋人同士に見えるまでリハーサルを何度も繰り返す」といったことや「間が欲しい」「目線は落とさない」などとアドバイスがあった。ただ、「間が欲しい」ことの理由は細かく語られなかったので、なぜそう言われているのか、そのセリフにはどういうものを求められているのか、瞬時に監督の言葉を汲み取るのは難しく感じられたように思う。もう一つの課題『早乙女カナコの場合は』では、ワイングラス、指輪、指輪のケース、クッキーなどが小道具として用意されており、監督は「良い俳優は小道具をちゃんと使う。グラスの乾杯の音や指輪のケースを閉じる音を使うとそれで人物が今何を感じているかが伝わる」とアドバイスが。

さらに、「息が足りていない」と呼吸の使い方までも求められた。もう一つのシーンでは監督が手書きしたセリフのカンペが目の前に用意されていた。監督は「セリフは独り言。好きなことを喋っている」と言い、目の前にあるセリフを見ながら芝居に取り組んだ。ここでは距離感が求められたように思った。距離=その人たちの関係性が生まれる。久しぶりなら久しぶりな距離ができる。監督の「距離で関係性は作れるからセリフはいらない」という言葉から人物の関係性はセリフだけではない、セリフ以外の要素の方が大切なのではないかと考えさせられた。

30分ほど延長してワークショップは終了。最後に監督からは「カメラは冷たいぐらいなんでも映す。人が見逃してもカメラは見逃さない」と語った。この言葉から最初に言っていた、「感情を飲み込みそれでも溢れてしまった感情が美しい」と言っていた理由が分かった気がした。さらに「現場は自分の考えてきたことを発表する場所ではないから現場ですぐに変えられる俳優は良い俳優だ。監督は俳優の目線で、俳優は監督の目線で映画を作る」と語り、俳優がものづくり全体の感覚を持つことの大切さを感じた。

そして、今回のワークショップで良かった上位3名が発表され、その3名には監督の過去作である『風たちの午後』と記念Tシャツが渡された。さらに、当日誕生日の受講生にメッセージカードを手渡ししたり、受講生1人1人の写真をノートに貼り、どんな人なのかを事前に確認するなど、監督からの愛をものすごく感じられたワークショップになった。これまで2回の芝居を通して、監督が語るものはそれぞれあって芝居には正解があるようでないものなのだと、たくさんの考えが頭をめぐった。「分からない」を大切にしてこれからも芝居に取り組んでいきたいと思う。

テーマ:映画業界の基礎知識
講 師:三谷一夫

初回は三谷さんによる映画業界の基礎知識についての授業だった。最初に、三谷さんが映画業界を志したきっかけを語る。続いて受講者はこのクラスで具体的に何をやっていきたいのかを共有していった。映画にはどういった仕事があるのか知りたい、地域が素敵に見える映画に出会った時地元が舞台の映画があったらいいなと思った、国際映画祭というものを日本に引っ張ってきたい、など三者三様の想いがあった。

これらを受け、三谷さんは「みんな映画を作るのにお金が無いとか知識と経験が無いというけれど、そんなのはなんとでもなるので踏み込むかどうか。ここに来たのなら踏み込むしかない」と受講者の背中を押した。このクラスには俳優クラスも聴講生として受講していたのだが、俳優に向けても「俳優は芝居専門と言わずにどんどんプロデュースの世界へ入った方がいい。結果的に芝居の仕事も増える。仕事は分けずにどんどんやった方がいい」ともコメント。

本題に入ると、2024年度の興行収入や日本で公開されている映画の本数についての話があった。2024年度の興行収入ランキングを全員で考えていく。1位には『名探偵コナン』、2位には『ハイキュー!!』、3位には『キングダム』といったアニメがランクイン。4位〜10位にも多くのアニメがランクインしており、トップ10の6割がアニメを占めている事実に驚かされた。次に、日本で公開されている映画の本数については1,190本であり、このうちの日本映画は685本。この685本の興行収入は約1558億円で、東宝がたった30本の映画で64%を占めていることを知り、1本の収入がどれだけ大きいかを考えさせられた。

日本には東宝以外にも松竹や東映などがあるが東宝の影響力は大きい。映画館(不動産)を持っていることで不動産業の利益があったり、テレビで放送されたドラマを映画化するといったように、映画の文化<売上となっている。第一回の吉田馨先生から日本映画の文化について学んだこともあり、今の映画はこのような結果になってしまっていることを知り、遺憾の念を抱いた。一方で、映画は社会に密接し発展する芸術だと考えると、興行収入のトップ10がアニメ映画で6割を占めていたり、文化よりも売上を重視されてしまうことは仕方がないことなのかとも思った。

このような話の中で、このアジアシネマアカデミーが「京都から世界を目指せ」と掲げているように、日本映画から離れても良いのでは?という言葉が。日本の映画の現状を知り、これから映画を作っていく一員としてどう映画と向き合っていくかを深く考える時間となった。

映画脚本読解(基礎)①
講 師:三谷一夫

 脚本読解を始める前に、これまで2回芝居をしてきて全員が何を感じていたのかを共有していった。その中で「緊張してしまい、セリフが飛んでしまったり頭では分かっているのに体が固くなってしまい思い通りにならなかった」というものが多く見受けられた。これを受け、三谷さんは「単純に体をコントロールできていないだけで、息が止まっている。だから、ヨガとか日本舞踊などで常に息をする訓練をした方がいい」と助言した。矢崎監督も呼吸について言っていたように、日々無意識にしている呼吸を芝居では意識する必要がある。意識が無意識を超えることは難しいかもしれないが、改めて呼吸の使い方を考える機会となった。

本題の脚本読解へ。まずは「オーケストラ」を例に、なぜ脚本読解が重要なのかということについて話があった。オーケストラで全体をまとめる「指揮者」が映画製作においては「監督」であり、作品を一つにしている「楽譜」が「脚本」である。各奏者が自由に楽譜を解釈して演奏していては曲は成り立たないのと同じように、映画製作でも各部署が自由に脚本を読んでいては作品は成り立たない。

この例だけで、作品を一つにまとめている土台(楽譜や脚本)を読み込むことの重要性が分かった。特に俳優部には脚本読解が求められると感じた。俳優部のもとに脚本が届くのは遅く、何年もかけて作られた脚本を短期間で読み込み理解しなければならない。以前、「監督の意図を翻訳したものが‘‘脚本’’であり、その翻訳されたものをさらに読み解いて翻訳するのが‘‘俳優’’だ」という言葉を目にしたことがあるが、その意味をより理解できた。

次に『桃太郎』について考えた。幼い頃に誰もが読む話だが、この話は続きが気にならないし、特に面白くない。その理由として、葛藤がないからだということに気がついた。グループに分かれて桃太郎の話の中にどんな葛藤があればいいのかを考え、全体に共有した。「鬼ヶ島へ行くのを止められてしまう、鬼にも家族がいる」など様々な意見が出た。葛藤があることで面白さが増したことを実感し、物語の中の葛藤がいかに重要かを知った。そして課題である『夏がはじまる』を読解していく。1人1人、この話の3行ストーリーを発表していき、次に葛藤の中でも外的葛藤と内的葛藤を考え、この作品は何の話をしているのかを考えていった。内的葛藤については脚本には書かれていないので、多くの受講者の頭を悩ませた。読解するにつれ様々な意見が飛び交う中、三谷さんは「主人公はどんな人か、を考えた時に暗い人だと思ったら明るい部分は無いかを探す。セリフを信じずに疑う」など、答えを探すのではなく色んな捉え方をすることが大事だとアドバイスがあった。

最後に芝居へと移った。脚本読解を経たことで読解前とは違う感覚が生まれたように感じた。1組1回ずつと短時間ではあったが、読解を踏まえて芝居に臨むことで、密度の濃い芝居ができたように思えた。話を聞く中でも芝居をする中でも脚本読解がいかに重要なことなのか、身をもって実感できたワークショップとなった。

映画監督実習③
講 師:三谷一夫
ゲスト:金子由里奈(映画監督)

今回は金子由里奈監督を迎えてのワークショップ。自己紹介から始まり、想像力を使った課題や短歌 から即興芝居、そして演技課題は監督の最新作である『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』を用い た。最初に監督からは「演技や映画のことはまだまだわからないことばっかりなので、今回お互いに 刺激を受け合えたらなと思っております」とコメント。

自己紹介では全員で円になり、事前に用意していた「自分が大切にしている物」と、その思い出を話 していく。ぬいぐるみや、ストラップ、アクセサリー、手帳など、それぞれの物にそれぞれの想いが 詰まっており、短いエピソードだけでもその人の歩んできた過去がどんなものであったのかが頭に浮かんだ。監督が全員に大切にしているものを聞いた理由として「人は人との関わりだけじゃなくて、 物や言葉などの非人間的な物でも作られている。芝居をする時、美術や小物は初めて見るものだけど、役としては一つ一つの物に思い出があって手に馴染んでいる。シーンに書かれていない外側では 物をどうやって育てているのかを考えると芝居が豊かになると思っているから」と語った。 

次に想像力を使った課題。監督がビニール袋をクシャクシャにして中央に置き「色んな角度から見てみて何に見える?」と質問を投げかけた。受講生たちからは「うさぎが寝ている、仕事終わりの人が 投げたビニール袋、魚の骨、漂流物」など様々な回答が。ただのクシャクシャに丸められたビニール 袋が、見る人の角度や感性によって色々なものに生まれ変われるのだということを実感し、想像する ことの無限の可能性を感じた。短歌を用いた即興芝居は、先ほどの想像力を使った課題で、想像した内容に共通しない人同士でグループを作り「風という名前をつけてあげました。それから彼を見ないのですが」という短歌から話を作りあげた。課題の短歌は5グループとも同じなのに、グループごと に考えることや選ぶ言葉が違った。想像から生まれた即興芝居を、見ている方もそれを想像するというように想像の連鎖がその空間を包んでいた。

そして芝居へ。課題は、麦戸ちゃんと七森が自分の身 に起きた出来事や気持ちを打ち明けるシーン。監督は芝居に入る前に、どのように解釈したのかを受講者と共有していく。芝居中は、監督が気になる点があれば芝居を止めた。指摘が多かったものとし て、体の使い方や「感情を息で表してしまっている」「言葉を喋っている」などが挙げられた。これまでのワークショップでも呼吸や息の使い方についての指摘があった。これまでの指摘は、普段の生活で無意識にしている息が芝居になるとできなくなるので意識してみるというもの。しかし今回の指摘は「感情を息で表してしまっている」という、日常ではしない癖が芝居に表れてしまっているというものだった。同じ息についての指摘でも、意識すべき視点が全く違うことを学んだ。

また「言葉を喋っている」点に関しては「セリフを喋っている時に自分との戦いになってしまって相手を意識して芝居ができていないから、今を意識することや準備して忘れることが重要」だとアドバイスがあった。そして、体の使い方に関しては七森の場合「自分の存在自体を怖がらせてしまうと思っているか ら、あぐらや足を開けた座り方は違う」と語り、相手を意識するのは言葉だけではなく体の使い方で も意識することが大切だと学んだ。他にも芝居が「芝居っぽく」ならないためには想像力の調整が必要だというアドバイスもあり、想像や言葉など、目に見えないものを相手にどう届けるかを意識したワークショップになった。

三谷さんからはセリフを相手に聞いてもらえているのかを気にすること、 そこで生まれる「揺らぎ」が見れたら良い芝居になる、とコメント。これまでのワークショップを経て、受講生個人の課題が明確になってきたのではないかと思う。様々な芝居へのアプローチがある中で、どう改善していくのか。1つ1つ丁寧に芝居と向き合っていきたい。

テーマ:映画ビジネスの基礎知識
講 師:三谷一夫

今回のテーマは、「映画ビジネスの基礎知識」についての授業だった。受講者が映画のどのような分野をやりたいのか、どのような企画を持っているのか、また映画の興行収入は何に当てられているのかなど映画公開後の動きに重点を置き、授業が進められた。

まず、受講者1人1人がどのような企画を持っているのかを全体に共有していく。俳優クラスの授業をそのまま映画にしてみたいといったものや、耳が不自由な人や言語関係なく世界に通用するセリフがないもの、地元を舞台にしたの、今までドキュメンタリーや音がテーマの映画を作ってきたから群像劇を作ってみたいなど、この一瞬で興味深いたくさんの企画案が挙がった。これを受け三谷さんは「企画は何個あってもいい。アイデアはたくさん出るけど、それを具体化させていく事が大変。だが、始めてみないと始まらないのでこの機会に是非挑戦してほしい」と語った。

次に映画公開にあたっての話へ。映画を企画し、脚本を書き撮影するというだけでも3年はかかるため、公開までに相当な体力を使うものだと思っていた。しかし、公開後の動きこそ、大きなエネルギーを必要とすることを知った。スタッフの村山さんと受講生の中に1人、自身の大学の卒業制作を劇場公開に向けて動いている途中らしく、「配給のことは大学では学ばないから、初めての事で分からない事が多い。予告編やフライヤーデザインを外部に依頼するとお金がかかるため自分たちでできるところは全て自分たちで賄っている」と話があった。公開後にも資金は必要で、どの映画館に上映してもらうかの交渉や広報活動など、映画を観客に届けるための作業が続いていく。

興行収入の話では、興行収入◯◯億円!とよく目にする。制作費や宣伝費含め、5億円かかったとして興行収入10億円を達成すれば黒字のように思えるが、実際はそうではなかった。10億円のうち60%が劇場に、配給が40%。配給収入が4億円だとしてもさらにそこから配給手数料が20%が引かれるため、手元に残るのは3.2億円ほどで、1.8億円の赤字となってしまう。そこで製作委員会の話へ。製作委員会には配給会社以外にも、テレビ局や出版社、芸能事務所などが含まれ、それらが出資することで各会社の得意分野を発揮しリスクを分散し映画を作り上げている。この仕組みを聞くと映画はうまく進むようにも思えるが、製作委員会を設立するにはデメリットもある。何社も集まると意思決定のスピードが落ちたり、権利や利益が細かく分かれるため投資家を呼び込めないなどの課題が挙げられた。 

今回、映画ビジネスを学ぶ中で、映画を作ることはとてつもなく面倒で大変だと改めて実感した。しかし、面倒で大変だからといって辞めようとか嫌いにはなることは無く、この面倒さや大変さを上回る喜びが映画にはあるのだと思い、さらに映画の魅力を感じられた授業となった。

映画脚本読解(基礎)②
講 師:三谷一夫

今回は芝居課題はなく、前回同様、三谷さんによる『夏がはじまる』と『フラガール』を用いた脚本読解のみの授業だった。『夏がはじまる』に関しては、前回は脚本の核心を掴んだので今回は役の核心を掴むために取り組めることとは何か、に重点を置いた。まず1つ目は人物が明るい人なのか頑固な人なのか、というようにどんな人物なのか「キャラクターを箇条書きする」こと。

2つ目は役の人物が生きた時代の空気感や、場所、生活、職業、など「背景を調べる」こと。では何を用いて背景を調べるのか。三谷さんは「本や写真、絵画、音楽、インターネットなど。音楽は特に時代の気分を反映していたりするのでその時代にどういう音楽が流行っていたのかを調べるのも一つの手段だ」と語った。
3つ目は人物の生い立ちや、トラウマ、思い出など「履歴書やエピソードを作ってみる」こと。エピソードは想像でしかないが、学生の時に何があったのか、誰にいつどのようなことを言われたのかなどを考えてみること。

4つ目は人物がどうしたい人なのか、どういうことをやりたいと思っている人なのか「目的・願望・欲求を考える」こと。脚本に書いてあることではなく、本当はこういうことをやり遂げたい、というように「根っこにある部分」を考えること。最後に、この人は布団に入って寝る前に何を呟くのだろうといった「呟き」を考えること。これらを踏まえ、『夏がはじまる』の人物像を読み解いていく。受講生の多くが行き詰まったのは「エピソード」と「呟き」だった。エピソードは曖昧にしていると人物がはっきりしてこないので、具体的に考える事が重要。「具体的に」という部分が難しく言葉に表すのがうまくできなかった。呟きに関しては、普段の生活で言うかもしれないが意識して呟こうとは思わない。呼吸と一緒で、無意識にしていることを考えることが難しく感じた。

他にも脚本を読み解く前の基本作業として、その作品の監督が他にどんな作品を撮っているのか、脚本家の生い立ちなど「映画の作り手たちの思考をチェックすること」が大切だと学んだ。俳優は映画制作の中でも一番遅くに脚本が渡るため、より作風を知っておくためにも制作人の好き嫌いだったり作品の世界観を掴んだりなど、人に興味を持つことの重要性を知った。

『フラガール』では、受講生が考えてきた3行ストーリーや主人公の目的・願望、外的葛藤や内的葛藤を共有し、脚本の核心を掴んでいった。主人公を考えた時に、フラダンス講師のまどかと炭坑町で育った紀美子の2つに分かれた。ここで重要なのは、作り手たちはどちらの人物の生き方を観客に見せたかったのかという事と人物の心の揺らぎの幅を考えることだ。これらを考えた時、主人公は「紀美子」と捉えた方が、脚本の核心に近づいていきやすくなるという結論に至り、脚本読解を進めていった。

今回2つの脚本を通し、作家の表現したいことを考える習慣や考えたことを文字や言葉にすること、作品と徹底的に向き合うことの大切さを感じた授業となった。また、俳優は作品と向き合う際「役作り」を行う。役作りというと、体を鍛えたり絞ったりなどの外見に意識が向き、役を作った気になってしまうこともある。しかし、大切なのは中身で「人生で経験したことで、その人の奥に内面化されたもの」を考えることや、本を読んだり映画を観たり、人物を知ったりなど多面的にアプローチをすることも重要だということを改めて実感できた。

映画監督実習④
講 師:三谷一夫
ゲスト:白羽弥仁(映画監督)

今回は前半に三谷さんが「オーディションの審査に通過する芝居」をテーマに『フラガール』を用いた芝居と、後半は白羽弥二監督をお迎えしたワークショップだった。

『フラガール』は、居酒屋で洋二郎がまどかに、妹の紀美子を支えてほしいと頼むシーンと、紀美子が早苗と一緒にフラダンスを辞める、と告げる2つのシーンに分かれた。まずは1回ずつ全組芝居をする。

2回目は、気になるところがあれば、受講者になぜその行動をとったのか、人物の特徴に触れたりなど芝居を止めながら進められた。洋二郎とまどかのシーンで指摘が多かったのは「芝居が流れている」ということ。居酒屋に入ってきた洋二郎が、すぐにまどかのもとへ行き、横に座るという行動は本当にその人物なら有り得るのかという問題が挙げられた。

改善していくうえで、洋二郎の置かれた状況や性格を掘り下げていくと、洋二郎の「ゆらぎ」が見えて、受講者の芝居が変わった。と、同時に洋二郎の芝居が変わればまどかの芝居も変わった。また、物語の季節はいつなのか。「オーディションの審査は朝から晩まで行われ、同じことの繰り返しを見ているので、冬ならば上着を着るといった細かいところが合否の分かれ目となる」と三谷さんから助言があった。

まどかに関しては、手持ち無沙汰になると目の前にある飲み物を理由なく飲んでしまうことや、洋二郎役の人が変わってもまどかの芝居があまり変わらないといった課題があった。本来なら、相手役が変われば、その都度受ける反応も変わってくるはず。不器用で人に頼るのが苦手なまどかが「一杯付き合え」と言われて素直にビールを手に取るのか、相手にセリフを言われたからセリフを返すのか。今回の芝居の改善点は人物の内面を探っていけば解決する問題ばかりだった。オーディションでは、審査課題を事前に渡されるものもあれば、当日に渡されるものもある。そして、今回のように長い時間を使って課題を考える時間もない。どれだけ瞬時に脚本を読み込むことや、相手に反応していくことの重要さを感じた。

後半の白羽弥二監督のワークショップでは、地下アイドルの解散危機から物語が展開される監督のオリジナル脚本を課題に進められた。今まで2人芝居が多かったが、今回は4芝居。テンポ感が求められ、いつもとは違う芝居のアプローチで取り組んだ。

監督からはセリフを言った後に息が十分出せていないことや、ずっと芝居が一本調子だと指摘があった。いつもとは違う芝居のアプローチでも、息をすることや感情の流れはどの芝居にも共通していることだと改めて感じた。最後には受講者から「どういう俳優が増えていってほしいか」と質問があった。監督からは「役者+社会に対して見開いていること」と答えがあった。例えば、役者+小説家や、役者+監督など、何かを突き詰められることが俳優としての振り幅を広げていくのだと感じた。

テーマ:映画の企画開発①
講 師:三谷一夫
ゲスト:深田祐輔(映画監督・プロデューサー・脚本家)

今回は映画監督・プロデューサー・脚本家である深田祐輔さんをゲストに迎え、2作品を例に「世界コンテンツの今を考える」をテーマに授業が行われた。1作品目は深田さんがプロデューサーで関わった『UltimateBeastmaster』という6カ国のアスリートが参加したリアリティーショー。日本で例えると、SASUKEのような競技に国ごとに選ばれた選手が挑戦する構成となっており、国境を越えて盛り上がることができ、世界的に視聴してもらうことを狙いとしている。

リアリティーショーというジャンルを用いることで、比較的低予算で作りやすく分かりやすいのが特徴。作中はいろんな言語が飛び交うが、見ているだけで楽しむことができる。この作品において深田さんは、各国のプロデューサーとやりとりをしながら、日本のパートを編集者の人と共に編集をしたり、出演許諾を行ったりなどを担当。世界コンテンツを制作するプロデューサーの仕事は映像を作るだけではなく、国や文化の違いを越えて多くの人と関わりながら作品を成立させる役割であることが分かった。

2作品目は、日本のストーリーを世界基準のアニメーションで表現しつつ、タイとのコラボレーションやバイクアクションと大手企業とのコラボレーションによって制作が行われた『TokyoOverride』。世界観を一から構築することでIP(知的財産)の基礎作りをしたり、制作にはタイ人も関わっており、タイのクリエイティブ人材は非常にレベルが高く、日本よりも優れているという話が印象に残った。このような国際的なコラボレーションによって、映画やアニメといった枠を超えた作品づくりが可能となり、一つの世界観をさまざまな形で広げていくワールドビルディングの可能性が示されていた。一方で、「世界コンテンツ」から「ローカル消費」の時代という話もあった。

『47Ronin』ではなく、『イクサガミ』のように世界中で同じように消費されるのではなくそれぞれの国や文化に合った形で楽しまれることを重視している、という事も印象に残った。深田さんが「日本のおかずで海外向けのお弁当を作る」と言っていたように、世界に発信することとローカルな価値をうまく組み合わせることが必要だと感じた。しかし、海外からみた日本のコンテンツは「アニメ」になっている。このクラスの最初の授業で学んだように、日本の興行収入はほとんどアニメで占められており、日本は映画も俳優も世界と比べると遅れているという話から、日本の文化や表現の強みを活かしつつ、映画や実写作品でも世界に通用する作品を作っていくことの重要性を改めて感じた。

他にも「世界コンテンツ」の「世界」とはどこを示しているのか。そもそも世界とは?自分目線の「世界」を定義するといったように、ただ「世界コンテンツ」を知るだけではなく、自分にとっての「世界コンテンツとは」を考えるきっかけになった。

映画監督実習⑤
「映画の音」からものづくりと芝居を考える
講 師:三谷一夫
ゲスト:松野泉(映画監督・録音技師)

第8回目のワークショップは、映画監督であり録音技師でもある松野泉さんをお迎えして行われた。事前課題としては、自分がなりたかった人物となりたくない人物を挙げてそこからその人物の職業を考えたり、初対面の相手の職業を知るための質問を考えるといった、今まで通りの脚本を用いた芝居ではなく自分自身について考える課題だった。また、『ビフォア・サンライズ』と『ビフォア・サンセット』『冬物語』の3作品を鑑賞することも勧められていた。

ワークショップが始まると、松野さんは挨拶をし始めた少し後に「人前で喋るのが苦手なのでシナリオを書いてきました」と言い、シナリオが受講者たちに配られた。そこには松野さんが直前まで喋っていた文章が一言一句、同じように書かれていた。松野さんが、そこに書かれたシナリオをたった今、頭に言葉が浮かび上がったかのように読んでいく。途中からは受講者がシナリオを読んでいった。松野さんが書いた文章をなるべく自分が書いたように読んでいくよう指示があった。受講者が読んでいくが、抑揚がついてしまい読んでいる「その人」が見えなかった。同じ文章なのに、書いた本人が読むのと他人が読むのでは違いがあり、翻訳された文章を聞いている感覚になった。

シナリオから一旦離れると、身体のワークが始まった。ゆっくりと立ってゆっくりと立つ。「へ〜(そうなんだ)」の「へ〜」だけを使って相手や自分に呼びかける。普段やらない動きをすることで恥が生まれると同時に意識が今ここに戻り相手の存在や自分の体の重さ、呼吸が際立った。また、ペアを作り背中合わせになり体育座りから相手の力を借りて立ってみる。芝居と一緒で、相手の存在を感じて意識しなければ立つことができなかった。

次に4人1組になり『ビフォア・サンライズ』の電車のシーンや電話のフリで話しているシーンを用いてのワーク。話す2人と見る2人に分かれる。話す方の2人は出会ったばかりの設定や、グループごとに関係性を決めていき、相手を「聞く」ことを意識しながら質問や会話をしていく。見る2人は喋っている片方の人を自分がカメラになったかのように見つめる。会話をし合う2人には間が生まれなかった。間が生まれてもいいのに、間が生まれることに責任感を感じ怖がっていた。

見ている方は、喋っている2人の「間」を埋める責任感や緊張感がはっきりと伝わり、間がないことはテンポの良さではなく不安の表れであると実感した。芝居においても同様に「何かをしなければならない」「止まってはいけない」という無意識な思い込みが、相手を聞くということを奪っているのかもしれないと感じた。間は失敗ではなく、相手を受け取った結果として自然に生まれるものだということをこのワークを通じて実感した。

今回のワークショップで松野さんが「出会いの瞬間に立ち会いたいと思う」と語っていたが、エチュードで行われた出会ったばっかりの人との会話は難しく感じたように「出会いの難しさ」を実感した。三谷さんからも「聞くことを丁寧に、芝居の空気の流れが変わる瞬間をみたい」とコメントがあった。そのためには生活の濃度を上げていくことが大事で、人に会うこと以外でも映画を見ることや美術館に行くこと、音楽を聞くことも全てが出会いの準備だということを実感したワークショップとなった。

映画脚本読解+演技実践
講 師:三谷一夫

2026年一発目となる第9回目のワークショップが行われた。今年度のワークショップは、課題となっていた『マイスモールランド』の芝居から始まった。主人公であるサーリャと、サーリャが働くバイト先の聡太が河川敷で会話をするシーンを二人ずつ順番に行った。

一巡目が終わったあと、三谷さんが軽く講評をし、脚本読解を始める前の段階として重要なステップを確認し、共有した。
1つは「脚本の背景を知ること。」その脚本はどのような時代設定で、どのような事がテーマとして描かれているのか。脚本の背景を学ぶことが作品の世界観を掴むことに繋がる。
もう1つは「作り手の視点を持つこと。」監督や脚本家が、何を考えてその脚本を作ったのかを知ることで、俳優自身も作り手としての視点を持って、作品に参加することができる。

それらを理解した上で『マイスモールランド』の脚本読解に入った。それぞれが考えてきた三行ストーリーを発表し、他者の考えを吸収した。その後、三行ストーリーを作るヒントとなる、「主人公の願望」や「葛藤」などの物語の要素を読み解き、脚本の核となるスルーラインを考えた。今回の『マイスモールランド』では、クルド人難民問題をテーマに、一人の女性がたくましく生きる姿の美しさや、女性がそうあって欲しいという願い、「生きる場所は自分で決める」というメッセージが込められている。

脚本読解で得たものを手に、2回目の芝居に取り組んだ。この回では気になるところがあればアドバイスが入った。サーリャが初めて本当の自分のことを話すこのシーンでは、サーリャや聡太の中にある葛藤がゆらぎとして芝居に出ているかがキモとなる。空気を作ろうと意識してしまうと、逆に二人の間に流れるものが消えてしまう。それぞれが持つ願望や、シーンの要点は抑えた上で、芝居中は目の前の会話に集中することで、空気が流れる芝居となる。アドバイスがあった後、芝居をする二人の間には自然と「二人の空気」が少しずつ流れるようになる感覚があった。それは芝居をするペアごとに違っていて、前回の課題であった「相手によって芝居が変化しない」というところにも変化が訪れている証拠かもしれないと感じた。

二回目の芝居が終わった後講評があり、それぞれの良かった点、改善すべき点を確認した。全体では、「二人の空気を大切にすること。」「自分の気持ちを優先して、やりたくなったら行動すること。」などが挙げられた。「会話」をきちんと行うことによってシーンは成り立っている、という重要性とそれを芝居で行う難しさを再確認できた。

テーマ:映画の企画開発②
講 師:三谷一夫
ゲスト:後藤美波(映画監督・プロデューサー・脚本家)

本日は監督、脚本家、プロデューサーと多岐にわたり活躍されている後藤美波さんをゲストにお招きしました。

後藤さんからは2024年に公開された映画「ブルーイマジン」に脚本家・プロデューサーとして参加されています。本作は全国で公開され、第53回ロッテルダム国際映画祭のBright Future部門に正式出品されました。

講義では、映画「ブルーイマジン」を事例に、企画書の作り方や制作資金調達のヒントをお話いただきました。海外サイトに掲載されているピッチリールなどの活用も大変為になったかと思います。

本クラスの最終回では実際に参加者の皆さんに映画企画のプレゼンをしていただく予定です。是非今日の講義を参考にしていただければと思います。

映画監督実習⑥
講 師:三谷一夫
ゲスト:柳裕章(映画監督)

本日は、柳裕章監督をお迎えして、次回の撮影実習に備えたリハーサルを行いました。

俳優たちは柳監督作品「事実無根」の脚本1冊を事前に熟読し、2グループに分かれて

提示された課題に挑みました。感情を強めに出すシーンが多く、苦労している方が多く見受けられました。

柳監督は「映像になると芝居が小さくみえる」「身体を使って出せるだけ出してみることで感情が沸きあがってくることもある」と指導いただきました。

この日はカメラマンの武村さんも俳優たちの様子を見に来てくださいました。

次回はカメラをいれて実践形式で俳優1人1人の演技リールを作成していきます。

プロの映画監督とカメラマンが俳優のリールを作ってくれる機会はなかなかないのでとても有難いです。オーディションを勝ち取れる映像を作りましょう!

映画監督実習⑦
プロのカメラマンを迎えて撮影実習
講 師:三谷一夫
ゲスト:柳裕章(映画監督)&武村敏弘(撮影技師)

今回は、柳裕章監督とカメラマンである武村敏弘さんをお迎えしての撮影実習だった。課題の作品は監督の最新作である『事実無根』を用いた。課題は星が事実を明らかにするために弁明するシーン、娘の悠美が過去の想いを爆発させるシーンを2つに分け、計3つの場面に振り分けられ、それぞれのシーンに取り組んでいった。いつもとは違う形式の撮影実習からか、受講者の身体には硬さが感じられ、それを見た監督は全員でストレッチをするように促した。そのおかげか、少しリラックスすることができ、早速撮影実習へと移った

映画の現場と同様に段取りから始まり、監督が演出をし、本番という流れで行われた。星が事実を弁明するシーンの段取りでは多くの組が「感情が出し切られていない」「まだまだ足りない」と指摘を受けた。監督は「他の監督だったらOKを出すかもしれないけれど、僕の場合は足りない」と語り、受講者は監督によって演出の違いが大きく変わり、それに素早く対応していくことの難しさを実感した。

本番が始まると、セリフを間違ったり演出通りに動いたりと順調に進んでいると思われたが、途中でカットがかけられた時があった。その理由としては、2人の対話のシーンをカットバックで撮影している時に、2人が重なってしまっていたからだった。武村さんからは「カットバックの時にカメラのレンズが見えていない時は、自分は映っていないから、レンズが見えるところに移動しないといけない」と語り、芝居に集中しつつもカメラの位置までをしっかりと把握しておくことの難しさを実感した。また、バストアップで撮影をしている時にも一つ注意点があった。それは、身体が揺れてしまっていること。緊張からか、無意識に揺れてしまっていた。

カメラの前にしっかりと立つこと、その場にその人物として存在することは、一見簡単なように思うが「役」よりも「自分」で感じる五感が勝ってしまう。目の前の相手や物を見つめ、言葉を聞き、それを受けて発信するまでに使う集中力がいかに大切なのかを実感できた。悠美が過去の想いを爆発させるシーンでも「感情が出し切られていない」という指摘を受けた。それと同時に、周囲の受けの芝居にもアドバイスがあった。4人で悠美を囲い、悠美の爆発した想いを受け取っているはずなのに誰1人動かずじっと見つめているだけで、結果的に悠美1人だけが芝居をしている状態になっていた。

情を爆発させることを邪魔してはいけないということだったり、カメラのことを考えると動けなくなってしまったことから、ここでも相手から受けることに集中しつつもカメラのことにも集中することが重要になった。そして、感情を爆発させている人だけが芝居をするのではなく、その周りにいる人物も心を動かし、一体となってその場の空気を作りその場に存在することで一つのシーンが完成するのだと改めて気が付いた。

最後に柳監督からは「今日指摘したことは明日できるようにはならない。俳優業でもそうでなくても一日にして成らず。自分はこういう人間だと決めつけてしまうと、そこで終わってしまうので家にいる時の自分や外にいる時の自分、引き出しを増やしておくこと」とアドバイスがあった。武村さんからは「今回は自由に動いてもらってそれを追うようにカメラを振っていたけれど、場合によってはカメラを振ってしまった時点でNGになってしまうことがあるので、決められた画角の中でいい芝居をするにはどうすればいいのかを考えながら今回の映像を見て欲しい」とアドバイスがあった。

初めてカメラの前に立った人もそうでない人も、新しい芝居の取り組み方を学べた時間となった。

テーマ:映画配給/宣伝/興業/二次利用
講 師:三谷一夫

今回は「映画配給/宣伝/興行/二次利用」をテーマに授業が進められた。その前に、企画プロデュースクラスの受講者が今持っている企画についての話題になった。以前にもどんな企画を持っているのか共有する機会があったが、その後も企画を持ち続け、考えを深め企画を練っていた。

受講者の1人は、「企画は一本だけにせず、アイディア出しのようにいくつも考えておきたい」と語り、それを受けて三谷さんは「プロデューサーと呼ばれる人たちは、10本ぐらい持っている人もいる。それぞれの企画に生かされることもあるので、同時に並行してやるのが良い」とコメントした。また、以前来てくださった深田祐輔さんが関わった作品に興味を持った受講者もいた。深田さんは2月の中旬から短編の映画を撮るらしく、今はその役者やスタッフを募集しており、何人かの受講生が興味を示していた。こういった企画が身近にあることで、受講者にとって大きな刺激になった。

本題に入ると、実際の映画製作で使われた予算表や収支報告書や出資製作契約書などを用いて進められた。予算表から受けた印象は、映画を作るにはこんなにもお金がかかるということ。ほとんどが人件費に当てられており、多くの人の労働によって成り立っていることを実感した。また、監督や脚本家には成功報酬というものがあり、俳優には成功報酬を設けているところはほとんどないと知って、役割によって契約内容や報酬の形が大きく異なることを学んだ。収支報告書からは映画を観てもらうことの難しさを実感した。

製作にかかった費用を回収することも考えなければいけないが、自分たちが熱量を注いで作ったものが少数の人の目にしか映らないのは寂しい。作品を作ることと同じぐらい、それをどのように届けどのように広めていくかを考える配給や宣伝の重要性を感じた。

出資製作契約書からは、専門的で複雑な内容がいくつも書いてあり、今誕生している映画はこのような手続きや取り決めを経て成立しているのだと知り、映画製作というのは非常に面倒くさいなと思った。しかし、同時にその面倒さを超える喜びがあるからこそ、映画は作り続けられているものだとも実感した。

映画脚本読解(中級)
講 師:三谷一夫

今回は脚本読解から芝居をするワークショップだった。課題の脚本は『わたしのお母さん』。受講者は事前に1冊の脚本から読解に取り組み、それをワークショップで全員と共有していく。

まず、物語を3行にまとめた「3行ストーリー」を発表していく。それぞれ選ぶ言葉は違うが、大体の内容は全員一致していた。次に主人公が物語の中で果たしたい目的を考えていくが、ここで少し詰まってしまう。この目的が曖昧になっていると演じる時にもその人物が見えてこなくなる。人物は根元の部分でどう思っているのかを見つけることが、芝居をより良くさせるために重要であると感じた。

人物の目的から、その目的を達成させるのを邪魔している外的葛藤と内的葛藤を考え、この物語の中で一番大事なシーンは何かを読み解き、芝居へと移った。芝居の課題は主人公の夕子と妹の晶子が、昔の母との思い出話をするシーンと、夕子が母と言い合いになった後に、旦那の信二が夕子を慰めるシーンに分かれた。

夕子と晶子のシーンでは晶子役の受講者が行き詰まってしまった。ここはただの思い出話ではなく、姉妹で抱いている母との記憶や距離感が浮き彫りになり、それを夕子が受け取る重要なシーンだった。しかし、その前提を読み取りきれなかったのか、表面的な会話になってしまい人物同士の関係性が見えなかった。

夕子と信二のシーンでは夕子が信二に凭れるというト書きがあった。芝居を始める前に、どこにどのように凭れるのかを事前に確認しておくことが大事だと、芝居を始める前の行動にアドバイスがあった。ト書きも曖昧にしてしまうと、芝居をしている自分たちだけではなく、見ている方にも人物の関係性や心情が伝わらず、脚本読解でも芝居の中でも、曖昧な部分を残しては人物が成り立たず何も伝えられないのだと強く実感した。

前回の柳監督のワークショップでも感じたことだが、人物を曖昧なままにしてしまうとそれが身体の揺れにつながってしまったり、焦ってしまったりなど「自分」としての戸惑いが役を邪魔してしまう。人物としてその場に存在するには、曖昧なまま立つのではなく、脚本をしっかりと読解し、目的や関係性を明確にすることが芝居を成立させるための土台であると気付かされたワークショップになった。

オーディションで何が作り手の心を掴むのか
講 師:三谷一夫

前半はオーディションでの自己紹介の練習をAとBの2チームに分かれて相互に審査を行い、後半は脚本を使ってグループオーディションの練習を行った。

AとB、それぞれ監督やカメラ、プロデューサーなど役割やどんな映画の内容かなどを決め、オーディションが始まった。実際のオーディション同様に、スタッフの紹介から始まり次にオーディションを受けている側の自己紹介へ。特技、好きな映画、役者になりたいと思ったきっかけなどそれぞれ、自分なりの言葉で話していく。その中でも審査側が気になった人に質問をしたり、全員に質問をしていく。

受講者が1人ずつ良かったと思う人、一緒に映画を作りたいと思った人を2人ずつ挙げていく。何回も名前が挙がる人もいれば誰にも選ばれない人もいた。何回も選ばれる人の共通点としては、声が大きくて聞きやすい、質問した時に答える時の表情が良い、決められた内容ではなくその場で自分の思ったことを話している、など。やはり声が通っていて聞きやすいとそれだけで印象に残るのだと実感し、声の大切さを知った。全員に共通してアドバイスを受けたこととしては、「就活みたい」「みんな自信がなさそうに見える」「自分以外の人が受け答えしている時の顔がずっと下を向いている」など。

また、1人の審査側の受講者が「アルバイト経験から得たこと」を全員に質問した際に、誰もアルバイト経験から得たことを自分の長所に繋げていなかったことも指摘された。せっかくの自分をアピールできる質問をされたのに、ただ気づいたことや得たことだけを話すだけになってしまい、質問者側の意図を汲み取ることができなかった。これまでにオーディションを受けたことがある人も無い人にとっても、これからに繋げていく材料を得た機会になった。

グループオーディションでは「カラオケ」というオーディションオリジナルの脚本を用いて行われた。新宿深夜2時半カラオケボックスの中、男2人(宏司と卓也)が歌うところに焦燥した女が1人(里美)乱入し、女が歌い始めたと思ったらその友達の女(ゆい)が入ってくる、という設定のシーンだった。脚本のト書きには最低限のことしか書いていなかったため、必要な動きは俳優自身で考える必要があった。宏司と卓也は酔っ払っているのでテンションを上げる必要があるが、そこをどう上げるのかが課題になった。里美は歌う時にこぼれる感情が課題に、ゆいは入ってくるタイミングや焦燥した里美をどう励ますのかが課題になった。

歌うまでの集中力はあっても歌が始まると集中が切れてしまったり、こぼれる感情にフォーカスをしてしまって歌えなくなるなど「感情がこぼれる」というものを歌に変換する力がまだまだ足りないのだと実感した。
今回、自己紹介にはテクニックがいることや、オーディションで審査側が何を見たいのかをよく考えることを学んだワークショップとなった。

テーマ:地域映画の作り方
講 師:三谷一夫
ゲスト:安田真奈(映画監督・脚本家)

本日は安田真奈監督にゲストに起こしいただき、地域映画の作り方について講義いただきました。

安田監督の経歴をご紹介いただいた後、プロデューサーの三谷さんが2018年にスタートされた映画シリーズ「ぼくらのレシピ図鑑シリーズ」の第1弾であり、安田監督が脚本・監督を担当された映画「36.8℃サンジュウロクドハチブ」を全員で鑑賞しました。
安田監督には地域の皆様に愛される映画づくりコツをお話いただき、三谷さんからはシリーズの特徴や他の商業映画との違いについてお話いただきました。

「ぼくらのレシピ図鑑シリーズ」は現在4弾まで発表されており、今後第5弾が制作されることが決定しているようです。

安田監督が掲げる「映画は終わらないお祭り」というメッセージがとても印象的でした。このシリーズは今後もたくさんの地域に展開されていきますので、1期生からプロデュースを手掛ける人が出てくることを楽しみにしています。

安田監督の次回作に向けて、1期生からも参加できそうな話もでてきて今後の展開が楽しみです。俳優クラスからもたくさんの方が聴講に来られてとても賑やかな時間になりました。最後は全員で記念撮影!

映画監督実習⑧
俳優も脚本を書いてみよう
講 師:三谷一夫
ゲスト:安田真奈(映画監督・脚本家)

今回は「俳優も実際に脚本を書いてみよう」ということをテーマに安田監督に「脚本の基本的な構造や書き方について詳しく講義いただきました。
俳優も脚本を書いてみることで、脚本のとらえ方が大きく変わるんですね。

課題脚本は監督の作品である『あした、授業参観いくから。』とオリジナルの脚本を用いた。『あした、授業参観いくから。』は、23分の短編映画で、全く同じ会話が五人の生徒の家庭で繰り返されるというもの。この作品を授業の中で受講者全員で観る時間が設けられた。同じストーリーでも、ト書や家庭環境、人の関係性が変わればセリフの言い方や行動も変わってくるという話を経て、事前に配られていた脚本に移った。

監督が2人のペアを振り分け、受講者たちはどんな人物か、その人物たちの関係性や設定を考えていった。「日曜日遊びに行かない?」と誘う。しかしその反応は良くない。と話が進んでいく。なぜ反応が良くないのかやなぜ遊びに誘ったのかは同じセリフでも、恋人同士なのか友達なのかによって言葉の重みや、距離感でいくつものパターンが生まれることを実感した。

その後は自己紹介の時間があった。自分のキャッチコピーを話し、最近の印象に残ったことを話す、という最初は難しく感じたが、昨日のオーディションのように堅い雰囲気はなく、受講者それぞれが自身の特徴をよく捉えられており、生き生きとした時間が広がっていた。

「役者の演技力や、撮影、美術、照明、音楽など、みんなの力でシンプルな脚本が豊かなシーンになっていく。脚本に興味を持って、完成された映像と見比べてたりしてほしい。役者も脚本を書いてみると、監督や脚本家の想いがより理解しやすくなる」とコメントがあった。

これまでたくさんの脚本を読解してきたが、読むだけではなく役者も脚本を書いてみることで、芝居の質も変わるのだということも実感した。

芸能事務所の仕組みを知ることから始めよう
講 師:三谷一夫
ゲスト:津嶋敬介(ホリプロ取締役)

今回は前半に『二十歳の原点』を用いた脚本読解と、後半にはホリプロの津嶋さんをお迎えして「芸能事務所の仕組みを知る」というテーマでの授業だった。

『二十歳の原点』は、高野悦子さんという方の日記が映画になっている、実話からできたものだった。これまでの脚本読解ではフィクションのものばかりだったが、今回はそうではなかったので、考える深さがこれまでとは違うような気がした。いつも通りに受講者全員で自分たちが考えてきた主人公の葛藤や人柄などを共有し、脚本を深めていった。その中の一つに「柔軟性」という言葉が印象に残った。主人公が他の人に言われたことをすぐに受け止めることに対して柔軟性があると考えた人と、それは人に流されてしまっているから柔軟性が無いと考えている人がいた。受講者の性格によって映画の中の人物の捉え方が、同じ言葉でも意味が違うことがあった。

普段の私たちが持っている短所を長所として、長所を短所としても表すことができるように、人物の見方にはたくさんの可能性があるのだと改めて感じた。脚本読解以外にも、受講者自身が普段日記を書くのかだったり、書いた日記を人に見せたいか、日記を書くことでどのような効果があるのかなど、かつて存在していた主人公に寄り添うために自身と比べてみるという時間があった。役と向き合うことは自分と向き合うことでもあり、誰を演じるにしても全ては自分が軸になるのだと実感した。

次にホリプロの津嶋さんによる「芸能事務所の仕組み」についてのお話。津嶋さんがホリプロに入社したきっかけから、タレントの売り出し方、タレントとマネージャーの関係性など、普段では聞けないようなことを教えてもらい、私たちが飛び込んでいる世界にはまだまだ知らないことがあった。

後半には受講者たちの自己PRの時間があった。事前に津嶋さんからは、「特技や趣味を言うのではなく自分が体験したエピソードを話すこと」とアドバイスがあった。アドバイス通りに自己PRをしていくと、受講者それぞれの個性がよく際立ちいつもより魅力的に見えた。

最後に津嶋さんからは「自分の落ちた作品を観て、なぜ自分が落ちたのかを考える」「役者は人の心を動かす仕事」「頑張ったから成功するわけではないけど、頑張らないと成功しない」と様々な言葉があった。どの言葉にも共通することは、「人間力が全てにつながる」ということだと思った。普段の生活をどう過ごすのか、自分と向き合う時間を作っていきたい。

テーマ:海外合作企画
講 師:三谷一夫
ゲスト:プリンセス・アンポール(映画監督・プロデューサー)

今回は映画監督・プロデューサーのプリンセス・アンポールさんにお越しいただき、国際共同制作について学んだ。始めにはプリンセスさんのなぜ映画をやろうと思ったのか、 どんなことをしてきたのか、お話があった。

最初から映画の世界に踏み込んだわけではなく、クリエイティブなことには興味があり韓国にも興味があったので、韓国の大学でメディアを最初に学んだという。そこで学んでいる時に、48時間で1つの短編映画を完成させるという「48時間プロジェクト」に出会い、映画製作が魅力的で素晴らしいものだと知り、そこから映画監督という夢を持った。

その後、まずは自分で映像を作ることが大切だと思いyoutubeで学生生活を撮ってそれを投稿しながら撮影や編集のスキルをあげていったという。そして日本に来日してからは、デザインと映像制 作の会社に入ったが、自分のやりたいことは「映画」だと改めて思い直し、去年から映画監督として活動している。

次に国際共同制作について。国際共同制作とは、各国のプロデューサーと制作費や制作スタッフを分担し、知恵を集結することでより大型で高品質の映画を制作することができるも の。国内での予算調達が困難な場合に海外からの資金調達や映画祭への選出可能性が高まるなどのメリットがあるとお話があった。国際共同制作の始め方については、「国際的な視点 で脚本を書く」「ポートフォリオを作成する」「フィルムラボに参加する」など。

プリンセスさんも映画祭やフィルムラボに参加した際には、どんどんいろんな監督に話を聞いてみたり名刺を渡すなどをしていると聞いて、上記の3つ以外にも自分から動くことが大 切なのだと実感した。プリンセスさんは今、初の長編映画を作っているという。どんなものが描かれた映画になっているのかとても楽しみだ。

映画脚本読解(中級)+演技実践
講 師:三谷一夫

今回は前回の続きである『二十歳の原点』を用いた芝居のワークショップだった。

全て2人でのシーンだったが、今までとはワンシーンが長くセリフの量も多かった。セリフの量が多いとそれに気を取られ、役に深みがなくなってしまったりフラフラと動いてしまったり、とにかく話を先に進めようとしてしまいその時の気分を大切にできていない瞬間が多くみられた。

『二十歳の原点』に登場する人物で主人公の先輩の「大山」という人物がおり、大山の人柄としては「リーダー気質があり周りを見れる」というように「強い人物」だった。その強い人物がフラフラ動いていたり手持ち無沙汰になっているとその人柄が全く見えない。そのことを指摘された受講者がアドバイスを受けもう一度芝居をすると、大山という人物が浮かび上がったような気がした。動き一つや距離感から生まれる空気というのは人物も作り上げていくのだと実感した。

他のシーンでは「・・・」というセリフについての話があった。シーンの始まりに「・・・」があるのにそれを無視して言葉があるところから始めてしまい、そのシーンでの見たいものが見えないような気がした。「・・・」はただ黙るという意味ではもちろん無く、心の中で言っていることである。それは俳優が考えることで、それを無視してしまうと役としての揺らぎが見えなくなってしまう。

こちらもアドバイスを受けた受講者がもう一度芝居をすると、言葉はないのに2人の間に何か見えるものが生まれた。小説や脚本にある「・・・」は読んでいる時はそのままにしがちだが、役を考えるときや演じるとなった時は1回そこで立ち止まり、人物が何を思い何を言うのかを考えることが大切だと学んだ。

三谷さんからは終始「気分を大切にして欲しい」や「深く想像すること」とアドバイスがあった。そして「脚本全体におけるシーンの役割までつかめているかというとまだまだだが、全体的に受講者の芝居は最初に比べると引き締まってきた」と話があった。確かに、芝居を重ねていくうちに、受講者の俳優としての姿が変わっていっているのではないかと思った。これからもずっと変わり続けられるよう、普段の生活で起きる小さいことから大きいことまでを、自分の何かにできるように意識していきたい。

落語で学ぶ俳優の技術
講 師:三谷一夫
ゲスト:桂雀太(落語家)

今回は前半に落語家の桂雀太さん、後半には助監督や監督、プロデューサーの向田優さんをお迎えしての講義だった。前半の桂雀太さんには、落語が始まる前には落語についてのことや落語家についてなどをお話していただき、その後には「天狗刺し」という、天狗のすき焼き(天すき)で一儲けしようと企む男が、鞍馬山で修行中の坊さんを本物の天狗と勘違いして捕らえ、京の町へ担いで帰る珍道中を描いた上方落語の滑稽噺と「夢の皮財布」という、酒飲みで怠け者の魚屋・政五郎が夢で拾った大金入りの革財布をめぐる有名な人情落語の二つを実際に間近で見ることができた。

二つともの噺に、ものすごく惹き込まれた。落語が終わると質問をする時間が設けられ、その中で「どの噺をするかはいつ決めているのか」という質問があった。その質問に対して「“枕”という落語を始める前に話す導入の話で、お客さんの反応やその場の空気を見て決めることが多い」とおっしゃっており、その場のお客さんとの関係で噺を選び作り上げていることを知りとても印象に残った。また「会場が一体化することは呼吸が一体化することであり、大きな生命体みたいな体験ができると一番良い」と語った。

質問の後には先着5名で落語を体験できる時間があった。時間は20秒ほどで、落語が初めての受講者でも楽しむことができた。落語以外にも雀太さんのお話に笑いを誘われる瞬間が多くあり、これまでの授業では映画にフォーカスを当ててきたが、落語という新しいジャンルを教えてもらうことで、知らなかったことからでも映画に通ずるものがあると実感し、今までとは違う体験ができた。

後半の向田さんの授業では「カチンコがなるまで」をテーマに映画制作についてのお話があった。授業の最初に、最近あった出来事を2行ほどで書く時間があった。受講者それぞれが考え発表していく。一人一人にエピソードが違ったが、その人のエピソードを違う人が話すとまた違った印象になるかもしれない。向田さんから、脚本とは「なんでもない出来事から爆発するものだ」とお話があり、脚本の種となるものは私たちの日常の些細な出来事の中にあるのだと実感できた。

また、脚本の中にある「ト書き」については、「ト書き一つでお金と時間と人が動く」という話が印象に残った。普段私たちが読んでいるセリフやト書きには演じる人物の背景だけでなく、作品を作るために欠かせない要素も詰め込まれているのだと脚本に対して新しい考えを持つことができた。他にも香盤表や絵コンテを作成するなど制作部や演出部の仕事を学び、多くの準備を経てやっとカチンコが鳴らせることを改めて知った。映画制作はカチンコがなった時にさらなる日常が始まり、日常を活かしながら日常を壊すものだとお話があり、映画制作というのは全ての今ある「日常」の延長線上にあるものなのではないかと感じた。

今回の授業では芝居は行わなかったが、いつも以上に学びがあったのではないかと思った。落語は映画とは違うように見えても、演じるという部分は共通するものであったり、映画制作のことを俳優がよく知っておくことは、作品作りに対しての新しい熱量にもなるし、これだけの準備があって俳優がカメラの前に立てるということを知っておくことで役に対してのアプローチの方法も変わってくるのではないかと思った。映画から映画を学ぶ、芝居から芝居を学ぶだけではなく、私たちがこれからも学んでいきたいことは全ての日常に転がっているのだと実感し、視野を広く持ってたくさんのことを知っていきたいと思えたワークショップだった。

テーマ:外国映画配給・国際映画祭
講 師:三谷一夫
ゲスト:今井太郎(映画プロデューサー)

今回は映画プロデューサーである今井太郎さんをお迎えし、「外国映画の配給・国際映画祭」をテーマに授業が行われた。今井さんは「自己紹介や生い立ちを話した方が制作や配給につながる部分が多いのでそこから話していこうと思う」と語り授業が始まった。

今井さんはもともと中学、高校の時から映画が好きで地元の映画館に通っていたという。しかし阪神・淡路大震災をきっかけに「好きなことがいつできなくなるか分からない」「この まま大学に進学するだけでいいのだろうか」と考えるようになり、高校卒業後に映画を学びにアメリカへ。6年アメリカに滞在していたが、ビザが切れ日本に帰国。当時は映画業界が 不況で映画会社に入るのが難しかったため、映画を作るための資金を貯めようと一度就職して正社員として働くことを選択した。

10年働いた後、シネアスト・オーガニゼーション大阪という、助成金から映画を作るプロジェクトで通った「泣き屋」の仕事に就いた女性の奮闘を描いた『見栄を張る』では「泣き屋」という日本独自の文化は海外でも通用するのでは と考え、プロデューサーとして参加。日本では30館、タイでは100館で上映された。このことについて「よりローカルな方がグローバル」とおっしゃっており印象に残った。

今井さんが配給会社の「foggy」を始めたのは、映画を制作し色んな映画祭に行くとたくさんの映画に出会うのに、劇場公開されていない映画や行き場のない映画があったことや、配 給の理論は分かってもどれだけお客さんがくるのかマーケットについて勉強したいと思ったことがきっかけだった。配給作品としては、サンダース国際映画祭審査員特別賞を受賞し た、フィリピン映画の『レオノールの脳内ヒプナゴシア』や現在公開中の『これからの私たち』がある。配給とは、映画の権利を借りる(買い付け)契約をして劇場に営業をしていくこ と。いくら良い映画でも劇場に断られると上映できないので、営業するのが難しいというお話があった。

これまでの授業ではビジネスメインの製作委員会システムに関する話はあったが、今回は海外をからめた制作や配給といった違った視点でお話を聞くことができた。映画は作ることだ けでなく、その後にどのようにして上映されているのかを改めて深く知ることのできた授業となった。

個々の課題と対策指導
講 師:三谷一夫

今回は『ハッシュ!』を用いて脚本読解と芝居を行った。

いつもの脚本読解の通りに主人公を全員で考えていくが、朝子と直也と勝裕の3人に大きく分かれた。特別大きな変化をしていないことや、登場人物に多くの障害や葛藤となっているものがたくさんあることなどから、受講者たちは主人公を誰と読めば良いのか頭を悩ませた。しかし、受講者それぞれがなぜその人物を主人公として読んだのかについては、はっきりとした理由を持っていた。脚本読解とは、三谷さんも前に言っていたように答え合わせをするものではなくどのように読み取り、どの人物から物語を捉えるのかを考える時間なのだと改めて感じた。

芝居は6つのシーンに分かれて行われた。その中でも一番難しそうだったのが、直也とその母の克美のシーン。直也の家に突然母の克美が来て直也に色々なことを言ってくる、という場面だったのだが、克美のペースが崩れてしまうと一気にその場の空気が切られたような感じがしてしまった。この親子の力関係やこれまでの背景をしっかりと持ちながら演じる必要 があるなと思った。また、ト書きについての指摘もあった。それは、ト書きに「扉を開ける」とあった時に、その場に扉はないのにエアーで開ける動作をしてしまうこと。開けるマネをすることになるのなら無理にエアーの動作をするのではなく、他の動作で表現した方が良いとアドバイスがあった。

ト書きをそのまま再現するのではなく、その場の状況に合わせてどう表現するのがベストなのかを考える必要があるのだと学んだ。そして、ト書きはただの段取りではなく、ト書きの前には必ずその人物の「気分」があるとアドバイスがあり、その人物がどのような気持ちでその行動を起こしているのかを考えるのが大切だと学んだ。

他のシーンで受講者の多くに共通していた課題が「動いてしまう」こと。セリフの有無に関わらず、フラフラしてしまう癖が出てしまっていた。三谷さんからは「そんなに動かなくても、カメラは心の揺らぎを映してくれている」とコメントがあった。動きばかりで表現しようとしたり身体で相手のセリフを聞くのではなく、人物の内面を大切にすることを意識して いきたい。

最後に三谷さんからは「皆、自分たちの課題が分かってきたように思う。だんだんと芝居が削ぎ落とされていくとセリフではないところで勝負ができてくる」とコメントがあった。 これまでのワークショップから、受講者の芝居はどんどんと良くなり、芝居も余計なものがつかなくなってきたように思う。次回で最終回となってしまうので、これまで学んできたこ とを存分に活かして最後のワークショップに取り組みたい。

演出家実習
講 師:三谷一夫
ゲスト:上田誠(ヨーロッパ企画・演出家・脚本家)

アジアシネマアカデミー俳優クラス、最後のゲストにヨーロッパ企画・脚本家・演出家・監督である上田誠さんをお迎えしてのワークショップだった。

上田さんが大学1年生の時に劇団のサークルを立ち上げたものが今のヨーロッパ企画で、劇団だけではなく『ドロステのはてで僕らは』『リバー、流れないでよ』などの映画にも携わっているため、演劇と映画を絡めてのお話がたくさんあった。その中で、「映画は世界線を意識した方がいい。演劇が日本以外でやっていても脅威にはならないが、映画や映像はある部分で世界一だったり、国外で撮られた映画が良かったら自国の映画と比べられてしまう。」という言葉が印象に残った。また「構造は海を越える」という言葉も印象的だった。

上田さんはパズルっぽい構成が得意で、それを活かせば予算がなくても構造で戦うことができると話していた。実際に京都で撮影された『リバー、流れないでよ』は2分間がタイムリープするというシンプルな設定だが、その構造の面白さが日本よりもフランスの方に集客を集めた。その他にも「構造」を意識した作品をいくつか見せてもらい、脚本上や構造での工夫が面白さを生み出すことを知った。

ワークショップ中盤からは実際に「構造」を意識した短編を撮影した。脚本は上田さんが受講者1人1人に当て書きをしてくださり、以前にゲストで来てくださった武村さんが撮影を担当してくださり短編を作っていった。

狭い空間に大人数での撮影だったため、自分がどのタイミングで動けば違和感なく映れるのかだったりカメラの動きを良く見ながら動く必要があったため、「構造」を意識した作品での撮影も人と人との連携がとても重要だなと感じ、今までの作品の構造とは違っても、自分の芝居だけではなくカメラやその他の空間、他の俳優との関係性の中で作品が出来上がっていくことを実感した。何テイクも重ね、撮影が終了した後実際に観てみると、想像を上回る「構造」を意識した面白さが映っていた。

最後には舞台と映画の違いについての話があった。舞台役者は稽古期間から千秋楽まで、長く作品作りに関わることに対し、映画俳優は撮影から撮影終わりまでという短い稼働時間になってしまう。だから「待ち」の俳優が多くなってしまう。いかに芝居以外のことで何ができるのか、自分で誘ってみたり自分から動くことができるのかが重要だという話があった。

また、映画と舞台の終わり方について、舞台は最後に人数が増えていった方が良く「耳や音」a由来に対し、映画は一つのことに向かっていく方が良くセリフよりも所作や佇まいなど「画」由来であるという話もあった。似ているようで似ていない舞台と映画。元々演劇をやっておりそこから映画を始めた上田さんから聞くお話は新鮮で、人の集まりで力を合わせて何かを作ることの楽しさを知ることができたワークショップだった。

テーマ:映画の企画・プレゼンテーション
講 師:三谷一夫

アジアシネマアカデミー企画プロデュースクラス最後は、受講者の考えている企画のプレゼンを行った。

当日は5名の企画プロデュースの受講者と俳優クラスの数名が聴講で参加し、ただ企画を発表するだけではなく具体化するにはどうすれば良いのかをクラス問わずに意見を交わし合った。 上がった企画には地域を舞台とするものが多く、他には海外のものや、このワークショップをベースにしたものなど様々なものがあった。

地域映画を企画した受講生は、場所というより人を意識し、自身の知り合いに掛け合い地域の自治体と繋いでもらうことや、地域の料亭を舞台にしたものを考えていた。この企画に対して、自治体を引っ張るには「有名なものがない、何もない地域の方が映画で盛り上げられるのではないか」「料亭を利用するなら〇〇周年という節目を意識すると映画を作ってみたいと思ってくれるのでは」といった意見が挙がっていた。

また、映画の制作チームと自治体との間でスムーズに進めるために自治体の人にどれだけ映画を知ってもらえるか、どれだけ映画を理解してもらえるのかという課題や、映画にする際に誰に監督をしてもらいたいのか、誰に演じて欲しいのかという部分までも考えないといけないとお話があり、企画は映画のベースになるため細部まで考え尽くす必要があるのだと改めて感じた。

それぞれの受講者のプレゼンから、それぞれの多様な想いや考えを知ることができ、企画の段階ですでにワクワクとした気持ちになった。今回でこのアジアシネマアカデミー1期は終わってしまうが、これからも企画を持ち続けてこれまでの出会いを活かして、企画で留まらず映画として形にしていって欲しいと感じた。

グループ発表会
講 師:三谷一夫

アジアシネマアカデミー俳優クラス、最後はグループでの芝居を行った。課題脚本は『ハッシュ!』と『フラガール』を用いた。

2つとも2シーンずつ5グループに分かれ、事前にグループでの話し合う時間が設けられ芝居へと移った。『ハッシュ!』では直也、勝裕、朝子、3人の関係性を勝裕や直也の家族に打ち明けるシーンと、エミが勝裕を引き止めるシーン。『フラガール』は小百合の父が亡くなってでも小百合が踊ると決意するシーンと、フラガールたちが親の死に目よりも「踊る」と言ったことを「踊れ」と言ったのは自分だ、とまどかが庇うシーン。最後なので、芝居を止めたりはせずにシーンに取り組んだ。

芝居が初めての企画プロデュースの受講生も参加しての芝居で、セリフの量もシーンの長さも長く、芝居が止まってしまうかと思われたが、どのグループも止まることはなかった。 「気分を大切にする」「距離感」「相手を見て聞く」など、これまでのワークショップで得たことを受講者1人1人が大切にしていたように思う。

芝居が終わった後は、『ハッシュ!』『フラガール』の1作品3人ずつ、芝居が良かった人を全員で選びそれぞれの作品で3位までが発表された。選ばれた人には映画のDVDが贈呈された。今回の芝居で選ばれた人も選ばれなかった人も、芝居が始まった去年の11月に比べると別人のような変化が見られた。

最後には円になり1人1人アジアシネマアカデミーで感じたことを言葉にしていった。「芝居をしたことがなかったから非日常を考えることの楽しさを実感できたし、最初はみんなと話せなかったけどだんだんみんなと仲良くなれたので、アカデミーが終わっても脚本を読むことをまた集まって繋がりを持ち続けたい」「感情を出すことをしてこなかったけど、芝居をすることで感情を取り戻した気分になった」など、アカデミーで芝居を学んだだけではなく、それぞれ自身の中身までも成長を感じられた半年間になった。

三谷さんからは「課題を出しすぎたかと思ったけれど、止まることなくできてすごい。毎回の日誌も楽しみにしていた。芝居や将来に行き詰まった時は、大勢に喜んで欲しいと思うのではなく、自分のためにはもちろん、自分の近くにいる人に喜んでもらいたいと思い続けること。そして上手い俳優ではなく、強い俳優になっていってほしい」とコメントがあった。 主催の普照さんからは「みんなが活躍できるような仕事を作っていきたい」とコメントがあった。せっかくこのような機会で同じ夢を持った人たちと出会えたことが無かったことにならないように、これからも繋がりあい、それぞれの夢に向かって進んでいきたい。

第2期レポート

2026年5月9日〜2026年9月27日

テーマ:オリエンテーション/京都の映画史(俳優クラスとの合同授業)
講 師:三谷一夫
ゲスト:吉田馨(元京都映画祭事務局長)

映画人養成スクールアジアシネマアカデミーの第2期が2026年5月に始動した。初回は俳優クラスと企画脚本クラスの両クラスが集まった。

オリエンテーションから始まり、レギュラー講師の三谷さんやスタッフの挨拶があった後、第2期生の自己紹介が始まった。
1期と同様、受講者には事前に自己紹介シートを作成してもらい、今回もそれぞれの人となりがよく分かるものになっていた。

このアジアシネマアカデミーを受けた動機として「前に芝居をやっていたことがあってもう一度やってみようと思った」「何も経験はないけど芝居がしたくて応募してみた」「普段は会社員だけど、別の人間になってみたい」「短編を撮りたい」など参加理由は様々だった。これから俳優クラスは全20回、企画脚本クラスは全10回、ここで出会った仲間たちとたくさんのことを学んでいきたい。

オリエンテーションと自己紹介が終わった後は、早速第一回のゲストである吉田馨先生をお迎えして、京都の映画史についての授業が行われた。第1期の時にも吉田先生から京都の映画史について学んだが、授業で取り扱われた映画が前回とは違い、また新しい歴史を学ぶことができた。

また、日本映画発祥の地が会場の近くに位置していたり街全体が撮影所であったことから「京都には日常の中に映画がある」のだと再認識した。配られた資料には映画の歴史について細かく書かれており、とても興味深いものがたくさんあった。2時間にわたり映画史を学んだ後、受講者たちから質問がいくつもあり、受け取るだけではなく自身が感じたことを共有し合い、とても深く学びのある時間となった。

人数が少ないからこそ、自分の持った意見を発信し、互いに高め合える時間にしていきたい。そして第2期では1期とは違うゲストも予定されているので、これからどんな新しいことを学べるのかが楽しみだ。

グループ発表会
講 師:三谷一夫

俳優クラス初回は『夏がはじまる』の脚本読解を経ての芝居に取り組んだ。

脚本読解に取り組む前に「ものづくりの感覚を養う」「自分の頭で考える」「自分の言葉を持つ」をテーマに話が進められた。映画の現場にはどんな部署があるのか、企画脚本にどれぐらいの年数を要するのかなど、俳優はただ芝居をするだけではなく俳優が現場に入るまでに行われることをちゃんと知ることが大切なのだという話があった。

また、俳優は日常でも芝居する数を重視しがちだが、そうではなく色々な本や脚本を「読む」色々な映画を「観る」色々な音楽や人の話を「聞く」というインプットが重要であるということも学んだ。三谷さんから、「脚本は映画の設計図なので脚本をもらったら‘‘設計図をもらった’’と考えること、読みとく深さが俳優の質を決める」と話があり、俳優がいかに短い期間で脚本を読み込みどれだけのものを準備していけるかが重要なのだと学んだ。この話を経て、脚本読解へ。脚本を読み込むためにはこの話の主人公は誰なのか、話の3行ストーリー、主人公の葛藤など考えることは様々。

今回の『夏がはじまる』では受講者全員が主人公を「ななえ」と捉え、それぞれの言葉で3行ストーリーを共有していった。次にななえはどんな人なのかという人物像について考えた。ななえに限らず、人物像は3個4個で収まるものではない。少なくても10個挙げることが大切で、多面的に考えることが芝居にもつながっていく。人物の葛藤について、外的葛藤は脚本には書かれているが、内的葛藤については脚本に書かれていないため難しく、行き詰まっていたが、受講者それぞれがしっかりと言葉にして考えを共有できていた。

脚本読解を経て芝居へ。 ななえと姉のみほとのシーン。全体的にしっかりとお互いを受け取り切れておらず芝居が流れてしまっている印象だった。2人の関係性をよく考えることや、芝居が始まってからの時間を大切にすることなどアドバイスがあった。 脚本読解は答えを探すためのものではなく、自分の頭で考え、言葉にすることが大切だということが芝居をすることでより実感できたのではないだろうか。受講生がこれからの全20回でどう変わっていくのかが楽しみだ。