◾️2025年11月15日俳優クラス③
映画監督実習②
講 師:三谷一夫
ゲスト:矢崎仁司(映画監督)
今回は矢崎仁司監督を迎え、『融点』と監督の最新作である『早乙女カナコの場合は』を課題にしたワークショップだった。それぞれ一冊の脚本をもらい、配役された課題に取り組んだ。最初はオーディション形式で自己紹介と、脚本を読んでみての感想に答えていく。また、受講者から監督への質問の時間もあった。1人の受講者が「オーディションで受かる人の特徴は」といった多くの人が気になる質問をした。監督の答えは「やりたがるアピールをする人は必ず落ちる」というものだった。
その理由として監督は「普段人と話す時に感情を剥き出しにせずにどこかに隠している。私自身、感情を飲み込んでも溢れてしまう感情が美しいと思っているので、絶対にやりたいです!と表現されてしまうと引いてしまうから」と答えた。多くの人は、オーディションという場では熱量をアピールすればするほど良いと思っているはず。時にはアピールを求められることがあるかもしれないが、監督のこの言葉から新たな視点が発見できたのではないだろうか。
自己紹介が終わり、芝居へ。最初に取り組んだ『融点』では1組目は本読みから行われ、次にリハーサル、本番、というように映画の撮影同様にカットを割って撮影を行った。監督からは、「空気感が作れるまで、恋人同士だったら恋人同士に見えるまでリハーサルを何度も繰り返す」といったことや「間が欲しい」「目線は落とさない」などとアドバイスがあった。ただ、「間が欲しい」ことの理由は細かく語られなかったので、なぜそう言われているのか、そのセリフにはどういうものを求められているのか、瞬時に監督の言葉を汲み取るのは難しく感じられたように思う。もう一つの課題『早乙女カナコの場合は』では、ワイングラス、指輪、指輪のケース、クッキーなどが小道具として用意されており、監督は「良い俳優は小道具をちゃんと使う。グラスの乾杯の音や指輪のケースを閉じる音を使うとそれで人物が今何を感じているかが伝わる」とアドバイスが。
さらに、「息が足りていない」と呼吸の使い方までも求められた。もう一つのシーンでは監督が手書きしたセリフのカンペが目の前に用意されていた。監督は「セリフは独り言。好きなことを喋っている」と言い、目の前にあるセリフを見ながら芝居に取り組んだ。ここでは距離感が求められたように思った。距離=その人たちの関係性が生まれる。久しぶりなら久しぶりな距離ができる。監督の「距離で関係性は作れるからセリフはいらない」という言葉から人物の関係性はセリフだけではない、セリフ以外の要素の方が大切なのではないかと考えさせられた。
30分ほど延長してワークショップは終了。最後に監督からは「カメラは冷たいぐらいなんでも映す。人が見逃してもカメラは見逃さない」と語った。この言葉から最初に言っていた、「感情を飲み込みそれでも溢れてしまった感情が美しい」と言っていた理由が分かった気がした。さらに「現場は自分の考えてきたことを発表する場所ではないから現場ですぐに変えられる俳優は良い俳優だ。監督は俳優の目線で、俳優は監督の目線で映画を作る」と語り、俳優がものづくり全体の感覚を持つことの大切さを感じた。
そして、今回のワークショップで良かった上位3名が発表され、その3名には監督の過去作である『風たちの午後』と記念Tシャツが渡された。さらに、当日誕生日の受講生にメッセージカードを手渡ししたり、受講生1人1人の写真をノートに貼り、どんな人なのかを事前に確認するなど、監督からの愛をものすごく感じられたワークショップになった。これまで2回の芝居を通して、監督が語るものはそれぞれあって芝居には正解があるようでないものなのだと、たくさんの考えが頭をめぐった。「分からない」を大切にしてこれからも芝居に取り組んでいきたいと思う。