12月28日俳優

受講者レポート

◾️2025年12月28日俳優クラス⑧
映画監督実習⑤
「映画の音」からものづくりと芝居を考える
講 師:三谷一夫
ゲスト:松野泉(映画監督・録音技師)

第8回目のワークショップは、映画監督であり録音技師でもある松野泉さんをお迎えして行われた。事前課題としては、自分がなりたかった人物となりたくない人物を挙げてそこからその人物の職業を考えたり、初対面の相手の職業を知るための質問を考えるといった、今まで通りの脚本を用いた芝居ではなく自分自身について考える課題だった。また、『ビフォア・サンライズ』と『ビフォア・サンセット』『冬物語』の3作品を鑑賞することも勧められていた。

ワークショップが始まると、松野さんは挨拶をし始めた少し後に「人前で喋るのが苦手なのでシナリオを書いてきました」と言い、シナリオが受講者たちに配られた。そこには松野さんが直前まで喋っていた文章が一言一句、同じように書かれていた。松野さんが、そこに書かれたシナリオをたった今、頭に言葉が浮かび上がったかのように読んでいく。途中からは受講者がシナリオを読んでいった。松野さんが書いた文章をなるべく自分が書いたように読んでいくよう指示があった。受講者が読んでいくが、抑揚がついてしまい読んでいる「その人」が見えなかった。同じ文章なのに、書いた本人が読むのと他人が読むのでは違いがあり、翻訳された文章を聞いている感覚になった。

シナリオから一旦離れると、身体のワークが始まった。ゆっくりと立ってゆっくりと立つ。「へ〜(そうなんだ)」の「へ〜」だけを使って相手や自分に呼びかける。普段やらない動きをすることで恥が生まれると同時に意識が今ここに戻り相手の存在や自分の体の重さ、呼吸が際立った。また、ペアを作り背中合わせになり体育座りから相手の力を借りて立ってみる。芝居と一緒で、相手の存在を感じて意識しなければ立つことができなかった。

次に4人1組になり『ビフォア・サンライズ』の電車のシーンや電話のフリで話しているシーンを用いてのワーク。話す2人と見る2人に分かれる。話す方の2人は出会ったばかりの設定や、グループごとに関係性を決めていき、相手を「聞く」ことを意識しながら質問や会話をしていく。見る2人は喋っている片方の人を自分がカメラになったかのように見つめる。会話をし合う2人には間が生まれなかった。間が生まれてもいいのに、間が生まれることに責任感を感じ怖がっていた。

見ている方は、喋っている2人の「間」を埋める責任感や緊張感がはっきりと伝わり、間がないことはテンポの良さではなく不安の表れであると実感した。芝居においても同様に「何かをしなければならない」「止まってはいけない」という無意識な思い込みが、相手を聞くということを奪っているのかもしれないと感じた。間は失敗ではなく、相手を受け取った結果として自然に生まれるものだということをこのワークを通じて実感した。

今回のワークショップで松野さんが「出会いの瞬間に立ち会いたいと思う」と語っていたが、エチュードで行われた出会ったばっかりの人との会話は難しく感じたように「出会いの難しさ」を実感した。三谷さんからも「聞くことを丁寧に、芝居の空気の流れが変わる瞬間をみたい」とコメントがあった。そのためには生活の濃度を上げていくことが大事で、人に会うこと以外でも映画を見ることや美術館に行くこと、音楽を聞くことも全てが出会いの準備だということを実感したワークショップとなった。